7話!
工房を出た僕たちは歩きながらリストを眺めた。リストはドルガノが扱える特殊素材で下が一番柔らかいそうだ。見かけによらず仕事に細やかな気遣いが溢れている。
「数は四つか」
「手に入れるのが大変だぞ」
なぜか楽しそうにヴェールが言った。
「なんか楽しそうだね」
僕がヴェールに訊ねるとニヒヒと笑って見せるヴェール。僕は少し首をかしげる。
「みんなで素材集めと実験だろ?」
「そうなるわね」
「セルカが戻ってきたのに結局みんなで一緒に何もやってないぞ、だから嬉しくて」
ヴェール以外が「あぁ」と納得の声を上げる。そういえば結局のところ、みんなバラバラに行動していた。しかもそうなると意外と顔をあわせる機会が結構減る。
「もしかしてこのまま解散かと思ったぞ」
その言葉にクレブリアが微笑んでヴェールの頭を撫でる。
「無いわ、それは」
「無いですよ」
「ない」
「無いね」
僕たちがそれぞれそう言うとヴェールが満足そうに笑う。
「でも確かにみんなで一緒にって無かったね」
「そうですね……個人向けの依頼が多いですよね、セレンって」
「そうよねぇ、街を離れてみましょうか」
ポツリと呟くようにクレブリア言う。
「離れます?」
「うーん」
なんとなくこの街に愛着もあって居着いていた。以前は他のところも行ってみたいと思っていたけど、この街に親しい人たくさんできて、その人たちと頻繁に会えなくなるというのが抵抗があった。
「離れると言っても、遠征という手もあるわ、どうするのが一番良いかなんてわからないし、すぐに決断しないとどこにも行けなくなる訳じゃないわ、焦らなくてもいいわよ」
そう言ってクレブリアが少し笑うと続ける。
「でも私はいろんな所に行ってみたいわね、見て学びたいわ」
「そっかぁ」
「まぁね……それはまぁ置いといて、まずはセルカの剣よ」
リストに視線を落としてクレブリアが言う。
「まず一番硬いので実験しないとね」
「あぁ、そうですね、柔らかいのから実験していって最後に一番硬いも壊れちゃったら目も当てられません」
クスクスと笑ってセルカがそう言ったのを聞いて僕は納得する。
「確かにね……あー……、ってなるね」
みんなで並んであー……となっているシーンを想像して、僕はおかしくなって笑ってしまった。セルカも同じように笑いだす。それにつられてクレブリアとヴェールも笑い始めた。
「ふふっ」
珍しくネピアも吹き出して笑ったけど、その一瞬だけだった。
1回目!