49話!
「セルカはあの男に見覚えはなかったの?」
「見覚え?」
「もし血縁者ならセルカの家に来てたりとか」
親戚が集まるような会がこの世界にもあるかどうかがわからないけど。
「そうね……だいぶ遠い親戚だったりしないかしら」
「聞いたことないですし、会ったこともないです」
セルカが困った様にそう言う。本当に無いようだ。
「いや、セルカを責めている訳じゃないのよ……話を変えましょう」
ちょっと申し訳なさそうにクレブリアが言葉を区切り続ける。
「ヤツのアジトはわかる? 連れて行かれた?」
「いえ……多分連れて行かれてないです」
「そうなんだ」
マントの男が何者でどこに潜んでいるか結局わからないという事。正体不明の男。これから絶対に会わないと言うなら、これで終わりと言うならそれでいいんだけど。
「まぁしょうがないわね……まだあるわ、ヤツの目的は何だったの? 聞いたりしなかったかしら?」
「目的は……わかりません、でも私の体で何かをしようとしてたみたいです」
体で何かするってやらしいのくらいしか僕は思いつかない。
「私のブラッドスキルが薄くなっているから、望みは達成できないって」
どういう事だろうか。僕は頭をフル回転して考えてみる。でもまともな回答は出てこない。僕はクレブリアを見ると考え中のようで首をかしげている。
「何がしたかったのかしら……全然わからないわ、血のつながりが薄くなってる……自分と違う人間になっている、それにどんな意味が」
「すみません、操られている時は疑問も感じなくて」
「謝ることじゃないよ!」
僕は申し訳なさそうに謝るセルカに間髪入れずにそう伝えた。しょうがなかった。囚われ操られていたんだから。
「そうよ、謝ることじゃないわ……私の方が謝らないと、疲れてるのに質問攻めにして」
「いえ! クレブリアさんこそ謝ることじゃないですよ!」
「ありがとう……最後に一ついいかしら?」
「はい!」
「ヤツには仲間はいたかしら? 単独?」
クレブリアのその問いにセルカはしばらく考える。
「たぶん……いなかったです、少なくとも私といる時は誰かと会っていたなんてことはありませんね」
「なるほど、そうよね」
それだけ言ったクレブリアがそっとセルカに抱きついた。
「急にどうしました?」
「聞きたい事はとりあえず聞いたわ……ここからは個人的にかな……帰ってきて良かったわ、嬉しい、ありがとう、おかえり」
「クレブリアさん……はい、ただいまです」
1回目!