11話!
朝の街が動き出した音が遠くの方で聞こえる。覚醒しだした意識で朝かなと考えると目をゆっくり開いた。天井が見える。そこから徐々に体の感覚が末端に向かって覚醒していく。投げ出していた左手の感覚が何かおかしい。しっとりとした肌触りに温かみがあってこれはまさに。
「人の肌?」
僕の問いかけは特に誰も答えてくれず消えていく。僕は左手の方に顔を向ける。そこには裸の女性が横たわって僕を見つめていた。
肩くらいまでの長さの水色の髪に青色の目。肌は真っ白でシーツを胸の上までかけている。胸はそれほど大きくないけど年齢は僕やセルカと同じくらいに見える。
「ど、どちら様?」
「吾輩は杖である、名前はまだない、どこで生まれたか、とんと見当がつかぬ」
「はい?」
「混乱? マスターの記憶にあった、状況に合う言葉引用」
確かに昔、クイズ番組で吾輩は猫であるの有名な一文の次の文が問題になってて、感心して記憶に残ってたけど。
「姿形決定のため、記憶無断使用、ごめんなさい」
「あっ、いやいいだ、それは大丈夫……杖って?」
女の子は僕の背後を指差して言う。
「アレ本体」
僕が振り向くとそこには僕が昨日想像した杖が立てかけてあった。
「カッコイイ……とそれはいい、君は?」
また女の子と向き合って聞く。
「精神体……記憶内の墓守、不滅魔法兵、参考にした、知能あるの希望だったから」
そういえばそんな事も考えた。
「そのへんは一応わかったよ……ところでなんで裸?」
「それがいいかと」
「服来て!」
僕がそう言うと女の子は霧散するように消えてまた現れた。今度は魔法使いっぽい黒のローブを着て。ローブの中はハロウィンの魔女コスプレみたいな格好だ。
「とりあえず……なんで急に杖が現れたの、ただ考えただけなのに」
「指輪」
「あっ」
僕は右手をとっさに見ると指輪が無くなっていた。そういう事か。
「ある程度、疑問は解消したよ」
指輪がこの娘に変身したんだ。僕が考えたから、それに見合う形で。
「名前、もらえれば」
「あっ名前」
いきなりで何も思いつかない。
「ネピア」
「ネピア……了承、ありがとうです」
またもや箱ティッシュの名前にしてしまった。お試しで貰った高級箱ティッシュ。なぜか思い出してしまった。
「エル、どうしたの? 誰と喋ってるの?」
クレブリアの声がしてドアがノックされる。とりあえずみんなに説明しないと、そう思い、僕はクレブリアに声をかけてみんなを集めるように言った。
1回目!