42話!
「セルカ!」
僕は走り出した。嬉しさが止まらない。一人でいるのはきっと自分で逃げ出したんだ。
「一番可能性が低いと思ってたのが来たわね」
後ろでクレブリアの声が聞こえる。みんなも僕と同じように走り出したんだ。
「久しぶり」
「良かったぜ」
それぞれが嬉しそうに声を上げてセルカに向かって走る。しかし、ある程度のところまで近寄るとセルカがいきなり向きを変えて走り出してしまった。
「なっ、ちょっ、ちょっと?!」
僕は混乱してしまう。セルカが逃げていってしまった。僕は背中を追いかけていく。
「もしかして捕まえてごらん的なアレ?」
ネピアがそう言うと僕は否定する。
「それはないでしょ」
「とりあえず追いかけて確保よ、罠の可能性もあるから気をつけて」
クレブリアの言葉にみんなが頷く。僕は魔力をまとってスピードを上げる。
「路地裏に入っちまった」
僕はスピードを緩めざる負えなかった。裏路地を全速力では走れない。
「でもこれは正常な判断力がある証拠ね」
確かにそうかもしれない。ヴェールが昔やった方法だ。
「でも冗談じゃなく本当に逃げてる証拠でもあるような」
僕がそう言うとクレブリアが頷く。どうして逃げるんだろう。いろいろ考えながら走っているとセルカが裏路地を出てしまう。
「もうっ、追い詰められない様に路地裏を出たわね」
「どうする? 待ち伏せとか……多分本気で走ったらまた裏路地入るような」
「むぅー、難しいわね……というか走りながらじゃ頭が回らないわ」
クレブリアはもう息があがり始めている。
「クレブリア、待っとけ、俺達がなんとかするからよ」
「わかったわ……あと追いかけるから」
それだけ言うとクレブリアはスピードを緩めていく。
「そうは言ってもこれからどうするの」
僕がそう問いかけるとゴーディルはニヤリと笑う。
「男なら策なんて必要ねぇよ、ただ追いかけるのみだ! ははっ」
そう言ってゴーディルはさらにスピードを上げる。でも今回は裏路地には入らない。
「あれ? どうして」
「門の外に出る気かもしれねぇ……チャンスだ」
そうだ、各門にはゴーディル隊が二名ずついるんだ。セルカは西門の方へ向かっている。これなら。
「捕まえろぉ!」
西門にセルカがもう少しで着く所でゴーディルが大声で門にいた二人に言う。しかし、立ちはだかった二人をセルカは軽々飛び越えて門を出ていってしまった。
「バカヤロウ!」
ゴーディルが通り抜けざまに二人にそう言った。
「エル、すまねぇ!」
「いや! そんな事いい!」
とにかく今はセルカだ。
街を出て外を少し進むと左手に広い野原が見える。そこまでたどり着くとセルカはスピードを落として野原に立った。
「セルカ……止まった」
「どういう事だ」
僕達が困惑しているとセルカがこちらに振り向いて笑った。
「あの方の為に……手合わせ願います」
セルカは笑顔を浮かべたまま剣を抜きこちらに向けて何かを唱えた。
「行きますね……《チェックメイト》」
2回目!