32話!
ヴァルツゴになんとか到着した。特に危ない目にはあわなかった。ひとまず安心。
「良かったわ……何事もなくて」
「うん、良かった」
「とりあえず、運輸屋に馬を返しに行きましょうか」
僕はクレブリアの言葉に頷いた。四人ともが降りた馬に声をかける。
「ありがとね」
僕の言葉に馬が首を縦に振る。無視されたらどうしようかと心配したけど良かった。僕は馬の首を撫でる。
「さぁ行くわよ」
手綱を引っ張って歩き始めるとヴェールが言った。
「宿大丈夫か……アタシが先に行ってとって来るぞ?」
「あぁそうね、お願いしようかしら」
「二部屋でいいか?」
僕とネピアはヴェールに頷いて見せる。
「私も大丈夫……お金渡しとくわ」
みんながヴェールにお金を渡すと「行ってくるぞ!」と元気に走っていった。
「元気ねぇ」
しみじみとクレブリアが言ってまた歩き始めた。
「ところでどうやって返すの? 連絡いってる感じかな」
「手紙……というか証文というのかしら、それを貰ってるから渡せばわかるらしいわ……お金も先に払ってるし」
「ほぉ……じゃあ乗って何処かにいなくなってもバレるかな」
「バレるわね、多分、証文に貸したのがいつ頃か書いてあるわ、予定も聞かれたからそれもね、封印されてるから偽造もできないし」
さすがにそうだよね。自分はそういう事する気はないけど、誰かはきっと考える。貸し出し系の証人は大変だろうな。防止策を練らないといけないから。
「早く返さないと僕達も馬泥棒になっちゃうね」
僕が冗談っぽく言うとクレブリアが言葉を返してきた。
「そうね、いい馬達だから欲しくなってきちゃったけど、返さなきゃ」
「残念」
ネピアが言うとクレブリアが笑う。
「別にいつでも借りればいいのよ」
「いつでも?」
「えぇ乗馬が趣味だけど馬を買うお金がない人は運輸屋から馬を借りて走り回って、元の場所に馬を返すって事、してる人いると思うわ」
「そうなんだ」
ネピアがポツリと呟く。
「ネピアもギルド登録する?」
「登録……今するとみんなに迷惑かけるから」
「そんなの気にしなくていいのよ」
クレブリアの言葉にネピアが顔を横に振る。
「登録は必要ない……でも、お金は今度からほしいかも」
「良かった、じゃあ今度から依頼料を僕の分から払うよ」
「いいの?」
「良いに決まってるよ」
僕がそう言うとネピアは軽く微笑んだ。ネピアも趣味を見つけたらしい。
2回目!