31話!
走っている最中に辺りは暗くなってしまった。暗くなった瞬間に危険になるというわけではないので大丈夫だけど、危険度は高まる。安心はできない。
僕達が初心者だからなのか馬の走り方が少し抑えめな気がする。走ってはいるけど、疾走してる感じではない。
「暗いな」
街道には街灯がない。月明かりしか頼りがない。するとクレブリアが乗っていた馬が速度を落とし始める。どうしたんだろう。それに合わせて僕もネピアもスピードが落ちていく。完全に歩くスピードになってしまった。
「どうしたの?」
「もう少しでつくわ……それに暗いから走るのは危ない、歩きましょう」
「そっか、見えづらいもんね」
「無理して走るほど遠くないわ」
だいぶ近づいてきたらしい。体も痛くなってきたし、ちょうどよかった。
「夜に街の外にいるの久しぶりだぞ」
ヴェールが言った。
「そうね、仲間になってからは夜に出歩く事なかったものね」
「お母さんが厳しいからだぞ」
「お母さんいうな」
ヴェールの冗談にクレブリアがツッコミを入れる。それを見て僕はついつい笑ってしまった。二人とも良い関係を築けている。
「ちなみに夜、街の外へ出てたのはどうして?」
僕は気になって聞いてみた。街の中の方が安全だ。宿に泊まるお金がなくても。
「色々あるぞ……嫌な事があって落ち込んだりした時とか」
「街の外に何があるのかしら……娯楽もないし」
ヴェールがニヤリと笑って空を指差す。僕はそれにつられて上を見た。
「うわ……」
僕は息を呑む。生まれて初めて、前の人生でも無かった物を僕は見た。満天の星。
「これを見に来てたぞ」
「これはすごい……今まで全然、気付かなかった」
「もったいないぞ……クレ姉は?」
「見た事あるわよ、私は主に街の外が拠点だったし……でも」
空を見ながらクレブリアが深呼吸をする。ちょっと泣きそうなのを押さえ込むような感じで。
「何というか人間として見てなかったから、もったいない事に感動なんてしなかったわね」
「なら、今日遅れたのは意味があった事だったぞ」
「ふふっ、そうね」
「ネピアはどう?」
そう聞いて僕はネピアを見る。ネピアも星をジッと眺めていた。
「すごい……なんて表現したらいいかわからない……でもなんか良い」
「そっか……良かった」
何かを感じ取ってくれたのなら嬉しい。
「もうちょっと見てたいかも」
ネピアがそう呟く。多分みんながそう思っていた。
僕はセルカを取り戻してみんなで見ようという言葉を飲み込んだ。なんというか、セルカとは二人だけでこの星を見たい。
2回目!