30話!
「クレブリア、ヴァルツゴというより……他領地に入る時って本当になにもないの?」
半分まで来たという話を聞いてから、もうだいぶ進んできた。そろそろ他領地に入っていてもおかしくないはず。僕は走るペースから歩くペースになったタイミングで聞いてみた。
「何もないわよ」
「すごいね、通行料とかそういうの取らないんだ」
「別の国に行くならあるかもしれないわね、でも国内を移動するのに馬車代とか以外のお金必要になったら、領主同士が諍い起こしそう」
「あぁ……起こりそう」
あそこの領民は領主が嫌いだから高くて、違う領民は安いとか、まぁいろいろアホな事やって仲が険悪になりそう。
「いろいろ難しいわよね、昔からないから今になって設けるって事がないだけかもしれないけど」
「なるほど」
「難しい話は終わりだぞ」
ヴェールが我慢できなくなった様子で口をはさむ。
「そうね」
「ヴァルツゴはなんて名前の領地の街なんだ?」
「ガゼリア領よ」
「本当に違う領地に来たんだね、行動範囲が広くなってきたなぁ」
僕がしみじみそう言うとクレブリアがクスリと微笑む。
「私のセリフよ、今までセレン近辺にしかいなかったから、知識だけで行った事ないし、楽しいわ……セルカがいればもっとだけど」
「今度はみんなでいろんな所に行こう、ちょっとした旅でもさ」
「そうね」
「行きたいぞ!」
ネピアも頷いている。そのためにもセルカを見つけて取り戻さないと。
「もうちょっとで着きそう?」
「まだまだってとこかしら」
僕は空を見てみる。遠くの方が赤みががってきている。そろそろ夕方の時間だ。
「ちょっと急ごうか……空が赤くなってきてる、まだ距離があるなら夜までに到着できないかも」
「そうね……急いだほうがいいかも、急いでも夜道を走る事になるのは覚悟しないといけないわ」
「そっか、ネピアは乗るのは慣れた? 走れそう?」
「うん、大丈夫、馬自身がついていってくれるでしょ?」
「そうね、私についてくるように言ってあげて、それならみんな走れるわ」
僕は頷いて、自分が乗っている馬の首を撫でてから言った。
「聞いてたかな? 前の馬についていってね」
僕の言葉に馬がチラリと視線を送ってくる。わかってくれたみたいだ。僕のに倣ってネピアも自身の馬に声をかける。
「よし、いいわね」
最後にクレブリアが自身の馬に声をかけた。
「お願いね、頑張ってね」
「よし、行こう」
僕の言葉にクレブリアが頷き、走り出す。あとを続くように僕の馬とネピアの馬が走り出した。
2回目!