29話!
「振り落とされるって」
恐ろしい事をさらっと言った。振り落とされるのか。気をつけないと。
「嫌な時は何かアクションがあるから、いきなり振り落とされたりしないわ」
「それならいいけど」
「さて、じゃあ早速出発よ、ゆっくりもしてられないわ」
クレブリアそう言うと早速、自分が連れている馬に一言声をかかけてヴェールを乗せる。そのままクレブリアもヴェールの後ろ側に乗った。
「よし」
僕も自分が連れている馬に向かって声をかける。
「よろしくね」
言葉に反応するように馬が顔を近づけてくる。僕は馬の目から鼻にかけてのあたりを撫でた。その後、僕は馬の背に乗る。
「おぉぉ、高い」
思いのほか視界が高くなって、気分がいい。
「じゃあ行くわよ」
ネピアもしっかり乗れたのを確認して、クレブリアを先頭に歩き始めた。
「すごい」
ちょっと位置が高くなっただけで景色と感じる風が全然変わってくる。
「速度上げるわよ」
先頭を行くクレブリアがこちらに振り返って言ったあと、スピードが上がる。僕も習ったとおりにして、スピードを上げた。倍ぐらいの速さになった感覚。
僕はネピアを見る。ちゃんとついて来てて安心した。まぁたぶん何もしなくても前の馬に合わせて、馬自身が走ってくれると思うけど。
クレブリアを見ると何だか楽しそうに走っている。乗馬を楽しんでいた。なんだか乗馬姿もそれっぽく、馬の走りに合わせて上下に揺れている。あんな感じにするのが普通なのかな。僕もクレブリアを真似て上下に揺れてみると馬がギロリとこちらを睨んできたのでやめた。振り落とされてしまう。
「大丈夫かしら?」
しばらく走って、歩いての繰り返しをして、だいぶ進んだ頃、スピードを緩めて歩いているとクレブリアがそう問いかけてきた。
「大丈夫だよ」
「大丈夫」
僕とネピアがそう答えると「あんた達の事じゃないわ」と言い放たれた。
「馬は疲れてない?」
「あぁそういう事」
僕は自分の馬とクレブリアの馬を見比べる。少し僕の馬の方が疲れてるかな。
「馬車の方が良かったかしら……ちょっと遅れ気味ね」
「なんかごめんね……下手くそで」
「まぁいいわ……小さい事は気にしない事にしましょう」
僕は乗っている馬の首を撫でながら「ごめんね」と話しかける。一瞬チラッと馬が僕を見たけど特にそれ以外の反応は無かった。
「半分くらいは来たからあと半分頑張るわよ」
1回目!