9話!
「普通のアクセサリーがいいです、魔道具とかじゃなくて」
セルカがそうポツリと言った。
「指輪はちょっとまだ難易度が高いので、布製のブレスレットから始めませんか」
ミサンガみたいな物をセルカは手に取る。色が白とか黒ではない、こげ茶のブレスレット。
「あぁいいね」
セルカが赤くなる。僕もつられて赤くなった。難易度が高いという意味が僕にも分かる。指輪のようなそれらしい物は恥ずかしくてまだ早いように思えた。
「じゃあ買ってくるよ」
僕は恥ずかしい空気に耐え切れずその場を離れる。クレブリアとヴェールは店の奥に入っているのか目の見える場所にはいない。ちょっと安心する。見られるのが恥ずかしい。
「なんかこそこそやってたわね」
みんなで店の外に出るとクレブリアが怪しむ目で僕とセルカを見る。僕はさりげなく話の方向を変えた。
「いやぁ何もやってないよ? そっちの指輪はどう? 見当たらないけど」
少し無言でクレブリアが僕たちを見た後、答えた。
「指輪の調節はあそこじゃ無理だから、鍛冶屋に持って行くみたいよ、後日取りに来てくれって、サイズだけ測ったわ」
「楽しみだぞ」
ヴェールがそう言うとクレブリアもまんざらでもなさそうに同意する。
「よかったですね」
かなり上機嫌なセルカがヴェールに言った。セルカの右手にはさっきのブレスレットがついている。僕の右手にももちろんついていた。あとから気づいたけど籠手を着けるのにも外さなくて良い様に布製にしたみたいだ。意外とちゃっかりだ。
「さて、宿に戻りますか」
僕がそう言うとみんなで宿に向かって歩き出した。
「そういえばヴェールはどこに泊まるの? 同じ宿屋で新しく?」
「違うわ、私の部屋に一緒よ、おばさんに頼んだらいいって言ってくれたわ」
「よかったです……でも借宿じゃなくてやっぱり家ほしいですね!」
「セルカの目標は自分の家を手に入れる事?」
クレブリアがそう聞くとセルカは顔を横に振った。
「目標は騎士になる事なので……なんというか希望?」
「あぁ希望ね……パーティの拠点兼住居っていいわね」
「先の事はわからないけど、もっと大きいパーティ……というかこの場合ギルドかな、そういうのになれるように頑張っていきたいね」
みんなが口々に良いと言ってくれる。そこにクレブリアが新たに言った。
「だったら騎士団を作ればいいんじゃないかしら、セルカもいられるように」
1回目!