9話!
「セルカにマントを着せて、マントの男はマントを着ないで顔も一切隠さないのよ」
「あっそっか、僕達はずっと白と黒の服着て白と黒のツートンカラーの剣を腰にさしてる女の子と聞いてた」
「セルカという名前と一緒にその特徴が公開されてるのよ」
この世界に写真はない。誰かの事を伝えるには名前とその人の特有の何かを一緒に知らせるしかない。武器だったり、よく使う魔法だったり、技だったりそういうのだ。
「マントの男も同じでしょう? マントと男しか特徴がないわ、特徴を他のものに変えられたら見つからないわ」
「なるほど……じゃあ違う聞き方で情報集めないと!」
僕は焦るように言うとクレブリアが手で制してきた。
「待ちなさい、私は馬鹿じゃないわ、もう情報収集をしてきたのよ」
「え?! さすが!」
「私とヴェールは商人から情報を集めたてのだけど、マントを着た女の子と大人の男を見かけなかったかって、大まかな背格好とズバリそういう格好じゃないかもって聞いたわ、そしたら数組当てはまりそうなのがいた」
「おぉ! じゃあそいつらが!」
「可能性がちょっとあるってだけよ……だから私達四人で確認に行きましょう」
僕は気持ちが高ぶった。やっと見つけた可能性だ。なんとかセルカに繋がっててほしい。
「それでゴーディル達には自給自足してる可能性を探ってほしいのよ」
「わかったぜ! やっと進展するんじゃねぇの!」
ゴーディルが僕の首に腕を巻いて、体重をかけてくる。
「うん!」
「さすがはクレブリア君じゃ、頼もしいの、馬車とか必要かの?」
「いえ、どうなるかわからないからその時々で捕まえるなり手配するわ……ありがとう」
ヨルセダがニッコリと笑って口を開く。
「それで場所はどこじゃ」
「レガルそれからヴァルツゴ」
「ヴァルツゴか、他領地じゃな、アンレーブ領から出るか」
「何か大変な手続きとかある感じ?」
僕が想像したのは日本の江戸時代の関所とかだ。もしそうなら領地から出るのが一苦労だと思う。
「特に何もなかったと思うわよ……確か」
「うむ、特に問題はないのじゃ……ただ領地を出るのはだいぶ遠くに行くという感覚があっての……私は出たことないのじゃ」
少し寂しそうな表情を見せてヨルセダが言った。
「まぁ気にせんでくれ、大した話じゃないのじゃ」
ヨルセダの歳なら自分の住んでる地域から出ることなんてめったにないし、普通だと僕は思う。
「さて……では、そろそろ終いじゃな、セルカ君が見つかる事を祈ってるのじゃ」
1回目!