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4_秘密にしなくてもいい関係。

 「社会的な立場的にも、店子としての立場的にも断りにくかったわけです」独りつぶやく優さんです。

「決して、女子小学生と遊ぶのが楽しいだろうな、とか、かわいいのでいいかもとか思ったりは、少ししかしていません」さらに独りつぶやく優さんです。

「犯罪、じゃないですよね?面白い遊びがあるから、一緒に僕の部屋で遊ばないって言って、可愛い女児小学生を誘うのは、字面からしてまずさしか感じませんが、ええ、問題はないですよね、知り合いだし、お隣さんだし、本人の了承も得ているし、ええと、一応保護者には面が割れているからおかしなことはできないですよね、するつもりもないけど!」なんとか理論武装を固めていく優さんでありました。


 詩織さんは、お風呂場の脱衣所、洗面所も兼ねているところでお着替えです。下着から全て乾いていることを確認して、ジャージを脱ぎます。脱いだ衣服を畳みつつ、洗濯紐に吊るされている衣服をとって、身につけていきます。

「人に見られうるならもう少しデザインの良い下着にした方が良かったのでしょうか?」などと、どこぞで仕入れてきた知識を呟く、詩織さんでありました。

 ジャージを脱いだあたりで、ちょっと姿見で身体を確認します。発育は年相応かそれより少し上といったところでしょうか、身長が高めなので、スタイルはすらっとしてよく見えます。スポーツブラでは窮屈な胸を見つつ、もう少しある方はいいのですか?と鏡の中の自分に尋ねたりしています。

「優さんの反応も少し微妙でしたし」と、つぶやきながら、身支度を整えます。自分の家とは違う洗剤の香りにちょっと、面白いと、笑みを見せる詩織さんでした。


「それでは、ちょうど午後から時間があるということですから、早速遊びませんか?」身支度をおえた詩織さんは、そう優さんに言いました。

「女子小学生から、遊びませんかって、自室で言われるとか、これはちょっとやばいんじゃないでしょうかね?」優さん、ちょっと意識をどこかに行かせて、遠い目をしてしまいます。

「?優さんどうしましたか?」

「詩織さんは一度お家にもどってきてください、あまり家を空けたままだとまずいでしょう?」気を取り直して、優さんはそう言いました。

「あ、そうですね。私のルールブックとか、筆記用具とかも持ってこないといけないですし。携帯端末も部屋から持って来たいです」素直に従う詩織さんです。

「ケータイ持ち歩いてないんですね」不思議そうな顔をする優さんです。

「外へ持っていって壊したり、無くしたりしたら怖いじゃないですか?」同じく不思議そうな顔をする詩織さんです。

「ああ、なるほど、あまり出歩かなければそれもありなわけですね」ちょっと目からウロコが落ちたような心持ちの優さんでした。


「じゃあ、私、一度お家に戻って、端末とかをとってきますね」スニーカを履いた詩織さんは、そう言って優さんの部屋を後にしました。そのスニーカーも濡れていましたが、コンパクトな多機能乾燥機を使用して、暖かく乾いています。痒いところに手が届く優さんでありました。


 優さんは、その間に軽く部屋の掃除をします。ついでにおやつとか、何かありましたかね?と戸袋を覗いてみることにしました。

「このポテトチップ、いつのだろう?」賞味期限を確認するとまだいけそうです。飲み物はサイダーが、まだ最後の、ペットボトルがありますから大丈夫、甘いものが欲しいですね、チョコの買い置きはあったでしょうか?これもまだギリギリいけそうですね。

「この部屋へ、誰ががやってくるのも久しぶりなんだな」ふと、賞味期限を気にする程度時間が経ったお菓子とかを手に取りながら、なんとなく寂しくなるようなことをつぶやく優さんでありました。


「お邪魔します」行儀よく、頭を下げて、部屋に入ってくる詩織さんです。

「はいどうぞ」軽く答える優さんです。

 リビングのローテーブルにルールブックと、各種シート、プレイングカードを広げます。手に取りやすいところに筆記用具を置いておきます。

 冬にはコタツにも転用されるローテーブルは、結構広めで、それらを広げても余裕のある作りになっています。他にあまり物を置いていない室内であるので、そのサイズのテーブルでもあまり窮屈さを感じさせません。


「優さんの部屋って、広いですね」

「まあ、ごちゃごちゃしたものは、全部隣の倉庫部屋へ入れてあるからね」

「あ、薫さんが言ってました。住居ほど汚れないし、部屋も空いたままだと損なだけだから、倉庫としてでも使用してくれて、家賃を払ってくれるので助かりますって」

「大家さん、結構苦労しているのかな?」

「先先代が建てたアパートを改修しながら経営しているんで、その改修費とか、バカにならないそうです。ただ、かなり頑丈に立てているので、手入れ次第では後100年は軽く持ちます、と不動産の方がおっしゃってました」

「なるほど、なら後100年は、ここに住むかな」

「100年経ってもお隣さんですね!」ニコニコと笑っている詩織さんでした。



 詩織さんと優さん、早速自分のキャラクターを作って、『机上世界の冒険譚』略して、『つくたん』を遊ぶことにします。


「へえ、詩織ちゃんは戦士が好きなんですね」

「はい、こう、大きな剣を振り回して、突撃していくのを想像するとかっこいいんです」

「なるほど、こうやんちゃそうな元気いっぱいのキャラですか?」

「その方向じゃなくて、こう、渋い傭兵とかそんな感じのおじ様で、お仕事で戦っているんですけど、自分が突っ込む方が味方が生き残りやすいからとか、プロフェッショナルな感じで、突き進むとみたいな、とイメージしてるんですよ」

「結構、渋いですね。悪くないです」

「こう、故郷に妻と娘を残していましてね、『今度娘が俺の誕生日に絵を描いてくれるんだ』とか、『二人目が出来てな』とか言って照れくさそうに鼻の頭を書いたりするんですよ」

「なにその死亡フラグの山は!?」

「こうすると、ソロミッションでお亡くなりになられても自然な感じで、彼のその死を悼むことができるんです」

「お亡くなりになること前提!」

「いえだって、あのダンジョン難易度高すぎでしょう、もう彼には兄弟が16人くらいいる設定になてしまいましたよ」

「子沢山だ!」

「先日、16番目の渋いオジさまがお亡くなりになりました」

「それでもオジさま設定!一体長男は何歳なんですか!?」

「四つ児が4セット、年子ならそれほど年齢に無理はありませんよ」

「いや、それ、産むほうが死にそうになりますよ」

「母親は違うんですよ」

「複雑な家庭環境きましたね!」

「父親も違うんです」

「他人でいいじゃありませんかもうそれ!」

「は!」

「え、今気がついたんですか」

「クローン技術の導入とかどうでしょう?」

「そっち?!で、それでおっさんが量産されるわけですか?ちょっと夢がありませんよそれ」

「やはり量産型は弱いのでしょうか?」

「知りませんよ、というかキャラを、大量生産、大量消費品みたいに、   、ある意味その様相おあるわけですか?」

「もはやあのダンジョンは死んで覚えるゲームのようですから、それほど間違いはないと思うのです、でも、こうそれぞれの、キャラの死を軽く扱いたくないのと、大量の設定を考える手間との折衷案としてのアイデアでこうなりました」

「もう少し何とかしましょうよ」

「今なら、あのルールブックのシナリオの紹介文、書き込んだ人の気持ちがわかる気がします」

「ええと結局クリアはできなかったんですか?」

「一度できましたよ?もう一回くらいクリアしたくて苦労しています」

「正直僕もあれをクリアした覚えがないのですけど、すごいですね詩織さん」

「」褒められて赤面する詩織さんでありました。


「詩織さんが戦士でいくのでしたら、私は魔法使いをやりましょうか」優さんはそう言って、キャラクターの特徴とか、能力とかを書き込むことができる用紙、キャラクターシートと言いますが、その職業欄に魔法使いと書き込みます。

「名前はどんな名前にしているんですか詩織さん?」尋ねます。

「ジョージさんです、ジョージ30世、いえそろそろ40世でしょうか?」得意満面な笑みで答える詩織さんであります。

「そのこだわり、嫌いじゃないです。でもそのジョーク、小学生が使うにはいささか渋すぎるような気がしますよ」ちょっと笑いながら答える優さんでありました。

「そうですか?薫さんは笑ってくれましたよ」

「結構メジャーなのでしょうか、椿のお話は?白黒映画でしたよね」

「7人グループの方も見たことがありますよ、薫さんと一緒に」

「もしかすると時代劇ファンなのでしょうか?」

「薫さんはそうかもしれませんね、火付盗賊改方とか、再放送があれば必ず録画して視聴していますし、確か専門チャンネルに加入するかどうか真剣に悩んでいて、結局仕事の関係で見ている時間がなさそうですと、しぶしぶ断念していましたから」

「詩織さんも好きなんですか?」

「好きですよ、でも先に原作を読む方です。池波先生の本はいいものでした」詩織さん、もっとディープだったようです。

「剣術を商売にするお話は、僕も見たことありますよ。もっとも僕は好きな役者さん目あてでしたけれども、ええと、主水さん」

「渋いおじさまでした、私も好きだったんですよ、歌舞伎役者さんでしたっけ?」趣味がとことん渋い方向へと突き進んでいる詩織さんでありました。

「それは、スペシャルな方ですね、ええと、確か主演映画で4冠を達した人が最初で、次が仕事人の方で、一番新しいのが、携帯電話のCMで白いお父さん犬に声を当ててる人です」その、役者さんの紹介する並びで、落ちにそれを持ってくる、優さんでありました。

「あの声、あのお方でしたんですか!知りませんでした。私もあの白い犬さん好きですよ」

「初代のおとーさんは引退しているみたいですね、良い余生を送っていただきたいものです」


「魔法使いのお名前はどうされるんですか?」

「では、おとーさんからの連想で、マリンさんとしましょう、ちなみにマーリンともかけています」連想ですっぱり名前を決定する優さんでありました。


 『つくたん』のゲームシステムでは最初のキャラクターを作るにあたって、決めなければならないのはその名前と職業だけです。ルールを拡張したもの(別の冊子に記載されていることが判明しています)では、多少特徴をつけられるものもありますが、基本として”2秒でできるキャラメイク”が売り文句なのだそうです。


「なのでキャラがロストしても再開するのが簡単なわけですね」

「詩織さん、その言い方は身も蓋もないのです」

「簡単にキャラを切り捨てて行ってしまって、後でちょっと私何か悪いことをしているんじゃないですか?ブラックなんじゃないですかって思い返すことがあるんです」暗く落ち込む詩織さんです。

「闇が深いですね、あのソロダンジョン。詩織さんあ、大丈夫です、あれが異常なだけなんですから」

「そうですよね!一部屋進むごとに山のようにトラップがあったり、理不尽な裏切りとか、ちょっといい感じのお薬を飲んだら、そのままフェードあうとしたりとか、ただ崖っぷちを歩いていただけで落ちて無くなってしまうとかしかも判定厳しいし!であったら即死の敵とかが出てくるソロシナリオなんてあの『つくたん』くらいですよね!」畳み掛けるように言う詩織さんです。

「あ、ゴメンなさい、結構その手のシナリオ、普通に黎明期とかではありました。最初に作られたRPGのそれとか、空飛ぶ野牛のあれとか、ソロシナリオって、かなり凶暴なのが多い、ということを今思い出しています」ちょっとガタガタと当時を思い出して震えている優さんでありました。

「さ、3桁はいってないと思う、犠牲者は」さらにつぶやく優さんです。

「ええと、それは今までやったソロシナリオの合計でしょうか」恐る恐る聞く詩織さんです。

「いえ、確か、家庭の主と言う意味の出版社から出ていた、空飛ぶ野牛がシステムを作ったシリーズでは、一冊あたり、そのくらいは」

「ひいいいい」叫び声と姿が、名画の模写に似ています、詩織さんでありました。


「最近でも、デスマスターとか、殺伐マスターとか、殺意溢れるお方とか、おられますので、基本キャラは死ぬものとして考えたほうが無難なのかもしれません」しんみりとした表情で言う優さんです。

「それはそれで極端な感じがするのですけれども?」詩織さんが一歩引きます。

「であるから、生き残るために工夫するのが美しいとは思うのです。まあ、RPGのシステムとか世界観とかありますから、一概には言えませんが」あれとか、それとか、登場するキャラクターの生死でシナリオを達成度が左右されない、むしろ美しくお亡くなりになられた方が、良い場合は、そちらを選択するための動因が仕掛けられていたりしますし、と説明を続けます。


「キャラクターがロストしてもいいんですか?」驚きの表情です。

「システム的にそれがプレイヤーに不利にならないようにしてあって、参加しているみんなが楽しめれば、それもあり、とするのがこのRPGというゲームの醍醐味の一つだと思いますよ」優さんが語ります。



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