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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
最初の非日常(ファンタジー)
96/206

非日常の足音

気持ち悪ったらない、そう愚痴りながらいい加減ケリをつける為、悠は今まで以上に木刀をしっかりと構える


「絵梨は社から出ないでね」


「大丈夫、内側から出られないようになってるから」


それは大丈夫なのか?と疑問を頭の片隅に追いやりながら、懲りずに飛び掛かって来るオオカミ擬きを睨み付け、悠は一撃必殺のその技を使うことに決める


人に使うのは勘当もののご法度だが、状況が状況な上に相手は獣、何の問題もない


「頭を落とせ――。【椿】」


その花ごと、ボトリと地面に落ちる椿を連想させる。相手の首から上を一刀両断で斬り飛ばす【名付きの型】である【椿】は悠の最も得意とする技の一つだ


一振りで斬り飛ばせる首は一つだが、その殺傷能力と確実性は【名付きの型】でもトップクラスであり、たとえそれが真剣だろうが木刀だろうが関係ない


例え持っている武器が刃物でなくても高嶺流の奥義たる【名付きの型】はその名の通りの効果と結果をもたらす

理屈や物理法則を現代科学の常識を真正面から叩き潰すのが高嶺流が時代にそぐわない一子相伝と言う継承方法と幾つかの厳しい規律を持つ理由だった


「ひっ……!!」


そしてその一撃を受けたオオカミ擬きはと言うと、思わず絵梨がそのおぞましさに短い悲鳴を上げてしまう程の最後を見せていた


「……」


思わず悠も押し黙ってしまったそれは間違いなくオオカミ擬きだったモノだ

首を斬り飛ばした瞬間、血肉を撒き散らすでもなく真っ黒な泥水のようなものになりながら地面にべちゃりと散らばったのだ


どうやらこのオオカミ擬きは生き物の類ですらないらしい。ただし、首を飛ばす等の事をすれば無力化は可能、

そう判断した悠は眉を寄せて不快感を表すのもそこそこに次の一手でオオカミ擬きを蹴散らすことにする


残り7匹。対処法が分かればわざわざ相手が飛び掛かるのを待ってやる必要もない


「災い転じて福と成せ――、【南天】!!」


ピッタリ七撃。素人目には瞬きしている内にオオカミ擬きがその泥水のようなモノを地面に撒き散らしながら潰れていく様子に絵梨は目を見開いて驚くが【南天】自体は【椿】同様、シンプルな攻撃方法だ


突きで敵の急所を貫き、一撃で絶命させる。それだけだ


簡単そうに見えるが、動き回る複数の敵の急所を一瞬の内に捉え、貫き、文字通りの一撃必殺を遂行するなど常人は、いや、鍛え抜かれたアスリートにも無理だろう


故に門外不出の一子相伝にして決して人に使うことなかれとされる高嶺流なのだ


「悠!!」


「あ、郁斗」


今の今まで忘れてた、と間の抜けた表情でうっかり返した悠はしまったと思うが、郁斗はそんなことは意に介さず目の前で見たオオカミ擬きだったモノに視線を向ける


「なんなんだこれ、生き物……、ではなさそうだが」


「さぁ?とりあえず倒せるって分かったから倒したけど……、とりあえずは絵梨と話をしよう」


「柏木はあの社か?」


「うん、ほら」


「遅いぞ間!!」


君の悪い粘性の高い泥水の様な何かに変わったオオカミ擬きを訝し気に睨みながら言葉を交わし、郁斗に絵梨の無事を伝えると社の格子戸に張り付いて文句を垂れているいつもの絵梨がいて、呆れと安堵で二人は揃って口元を緩めるのだった


「うるさいぞ柏木、そっちに行くから待ってろ」


詳しい事情を聴くには本人に喋ってもらうのが一番だ。元気そうに騒げるのだから怪我等は無いのだろうと郁斗は早足で社に向かう


悠もそれに続こうとして、ピクリと足を止める


そして


「っ!!固く硬く、堅牢であれ――。【黒樫】!!」


何かに気付いた様に振り返り、防御用の【名付きの型】を使うと同時



悠のいた場所が爆炎に包まれた



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