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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
最初の非日常(ファンタジー)
92/206

非日常の足音

今頃、高嶺家から悠と郁斗が抜け出していることがバレているであろう頃、二人は自転車を漕いで街中を駆け抜けてた


「夏休みだってのに、子供が少ないね」


「動物とは言え生き物を殺して回る変質者が出てるからな。年齢が下がれば下がるだけ、親は外に出したがらないだろうな」


夏休みの真っただ中の日中だと言うのに小学生を始めとした学生が見慣れた街中に少なかい


タダでさえ今年は酷暑と言われていて全国ニュースでは熱中症の注意喚起が連日繰り返さされているのも相俟って、笠山市の街中には今まで見たことが無いくらい子供の姿が無い


子供とは言わずとも、年の若さで言えば最年少が悠たちになる位なのだ


「てか、笠山まで行くのは良いが、行ってどうすんだ?絵梨がいるとは限らないぞ」


熱い太陽の陽の光を浴びて吹き出す汗を拭いながら自転車を漕ぎ、後ろから追い掛ける形になっている郁斗が前を走る悠にふと頭に浮かんだ疑問をぶつける


桃から貰った情報はあくまで昨日の情報。笠山の展望台に寝泊まりする施設は当然ないので、一日経っている以上は移動してしまったと考えるのが普通だ


「……」


「……なんも考えずに飛び出したな、お前」


前を走る悠の汗が気まずそうな冷や汗に変わったのを察した郁斗は片手をハンドルから離して眉間を揉み解すように押さえる


武芸の試合となれば冷静で豪胆な悠だが、それ以外の部分ではどうも直情的になりがちで考えなしになってしまう

思慮深いようで結局はとりあえず突っ走てしまうのは若さの証明か、まだまだ青い若者か


「ど、どのみち行ってみて手掛かりとか探さないと!!」


「俺らは警察じゃないんだがな」


それでも友人の為に何かしようと突き進む彼女たちは、きっと間違っていない




更に数十分、炎天下の中自転車を漕ぎ続けた二人は目的地の笠山のある笠山公園の敷地内に到着する

それなりの広さを誇る小高い丘である笠山全体を園地とした笠山公園は笠山市が直轄で管理する少し珍しい公園で出入り自体は無料であるが、公園内には遊具やハイキングコースを始め、釣りのできるため池や、一軒だけであるが売店なども存在する


ジィジィと五月蠅い油蝉の大合唱をこれでもかと浴びながら、木陰の駐輪場に自転車を止めると二人はまず絵梨が向かうと言ったらしい展望台へと足を向ける


「徒歩15分とは言え、この暑さでハイキングは堪えるな」


「売店で飲み物買って行こ。熱中症になってちゃしょうがないし」


つもりだったかあまりの暑さに流石の二人の意志も少し挫ける

ダラダラと絶え間なく噴き出て来る汗を持って来たハンドタオルで拭いながら、悠は郁斗を引き連れて売店へと逃げ込む


生憎冷房が効いているような立派な建物ではない小ぢんまりとしたその売店では軒先に置いてある、この猛暑には焼け石に水であろう扇風機の前に陣取ったおばさんがやはり暑そうに団扇を仰いでいた


「いらっしゃい。アイスでも食べて行くかい?」


「あと飲み物を、スポーツドリンク有ります?」


「あるよー。二つ合わせて540円ね」


お金さえ払えば銘柄は好きなの取って行きなとおばさんが後ろ手に指す冷蔵庫の冷気で少し涼み、スポーツドリンク二本とアイスを買った二人は暑さから逃げるように扇風機近くに向かいスポドリとアイスの封を切った


「暑い中デートかい?」


「あはは、そんな感じです」


小さい頃からお世話になる60円程度の値段で買えるアイスキャンディ―に悠がかぶり付いてたところ、売店を管理しているらしいおばさんから世間話程度に話を振られ、無難に返す


わざわざ理由をつけて否定するのも面倒なのでそう聞かれたら否定もしないが特別肯定もしないのは以前二人が決めたルールである


「俺らくらいの年でここに来るのはやっぱ珍しいですか?」


「あんまり見ないねぇ。若い子なら遊ぶなら仙台に行っちゃうだろうし、天気もそうだけどあのちょっとおっかないニュースもあるし、ここ最近は若い子どころか人全体が少ないね」


おばさんはそう言ってから思い出したようにそうだ、と言うと昨日は背の高い女の子が来たね。とそう呟いた


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