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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
プロローグ
9/206

どうしてこうなったのか

結果から言って悠の精神的疲労は本人が認知する中で過去最大級にまで膨れ上がった


何せ購入しようとした下着、正確に言えばブラジャーを片っ端から試着させられたのだ


「同じサイズでもメーカーによって着け心地とかサイズが微妙に違うから、同じサイズでも一回試着すること」


とは勿論桜の言葉である

試着が大事なのは悠も分かる。過去に適当に見繕った服を実際家で来てみたらサイズが合わず、着れずじまいで箪笥の肥やしになってしまったのだ


ましてや一般的に言われる女性の素肌。それらを保護する下着類にこだわることは悪い事ではないのだが、如何せんその量と、羞恥心で悠の精神的疲労はメーターいっぱいまで振り切れることとなった


「これでブラの付け方は一通りわかったでしょ?」


「えぇ、嫌でも……」


アウトレットパークの一角、木製の椅子とテーブルが複数置かれた休憩スペースで突っ伏す悠に桜は満足げに笑う


数にして15セットとパンツだけ+5枚、つまり最低15回もの回数を悠は試着したのだ

その度に悠は上半身裸になり、自分の胸を触り、状態を確認するためにまじまじと鏡を見つめることになったのである


おかげさまで悠はあっという間にブラの着用方法を覚えたが、同時に何か色々なものを失った気がした。気がするだけで自分の身体なのだから何も失っちゃいないのだが


「ほら、そろそろ次のお買い物に行きましょ。春物と夏物、どっちも買っておかなきゃならないんだから」


「ファストファッションで良くない?安いとこでちゃちゃっとさー」


「そこでも買うけどちゃんと他のお店にも行くわよ。女の子なんだから、ある程度のお洒落は嗜んでおかないと」


「別にいいってー」


既にへとへとな悠はファストファッション、安価でシンプルなデザインの多い衣服でいいじゃないかと桜に打診するが、否定は無いにしろ後回しと言うことにされる


最近のファストファッションは凝った物も多くなりつつあるが、やはりそこは安さ重視なため、少しでも値段の高いブランドの衣服にはデザイン性は劣る


桜としては悠に着飾ってもらいたいようで、本人の意思は関係なく行く気満々


これには悠もため息をつくしかなかった


どうにも避けられず、結局桜が満足するまで付き合うことになった悠は帰宅早々、ベッドにダイブして意識を手放すことになるのであった







翌朝、夕飯も食べずシャワーも浴びず疲れに身を任せたまま爆睡した悠は空腹で目を覚ます


「……腹減った」


目覚めは悪い。腹が減って目が覚めるなど目覚ましに起こされるよりも悠は気分の悪いものになっている

そのまま寝たので髪もぼさぼさ、ハッキリ言って酷い有様であった


「おはよー……」


「はい、おはよう。……ってあらやだ、悠ちゃん髪すごいことになってるわよ?梳かしてあげるからこっちにいらっしゃい」


「ご飯はー?」


「食べながらで良いからほら」


二階の自室から居間に降りると母が剛や新一の食器をかたずけている最中で、悠の茶碗とおかずは準備万端。先に食べ終えたのだろう剛は道場、新一は大学に行った様だ


それを確認して自分の茶碗が用意されている場所に座ると、桜がささっと茶碗にご飯をよそい、みそ汁も準備する。準備が終わると同時にいただきますの一言と共に悠はずずっとみそ汁を啜り、朝食を摂り始める


その間に桜はヘアブラシを用意し、悠の酷い寝癖の髪を梳かし始めた


「ちょっと食べずらい」


「我慢なさい」


ブラシが通る度に頭が揺れ、悠が抗議するが桜はぴしゃりと返して黙らせる

どうにもこのくしゃくしゃの髪がお気に召さない様子


はて、と悠は心当たり探るとそう言えば桜は髪の毛に関しては人一倍気を遣っていたことを思い出す。


髪は女の命


桜にとって、まだ女子初心者で元男子の悠言えど髪がボサボサなのはきっと許せないことなのだろうなと勝手に思いながら沢庵をポリポリと音を鳴らして食べ進めていく

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