非日常の足音
一人暮らしの女子高生の行方が分からないという事が分かり、静かな日中を過ごしていた高嶺家は俄かに忙しくなる
「すみません、柏木さんでしたよね?いなくなった女の子が何時頃いなくなったとかそういう事を詳しく伺ってもよろしいですか?」
「詳しいことは私も分かってないけどねえ。昨日から連絡がつかないことに気が付いて、その前に連絡したのが三日前だよ」
珠代を居間まで通し、桜と郁代が詳しい話を聞くべく次々と質問を重ねて行く
と言っても珠代一人の情報では絵梨が少なくとも昨日、或いは一昨日辺りから連絡が取れなくなっていた、という事だけ
後は彼女の容姿や背格好をパトロール指定いる豪達に伝え、もし見つけたら保護するようにお願いするのが個人の範疇では精一杯だった
「捜索願は出したんですか?」
「それなんだけどね、私では遠縁過ぎて絵梨の捜索願は受理してもらえないんだよ。警察にはそこをどうにか、って何回も言ったんだけどねぇ。規則は規則だからと殆ど門前払いだったよ」
「そんな……、物騒な事件だって起こってるのに」
捜索願と言うは捜索対象者の家族、親族、同居人や恋人、等の近しい人たちが警察に提出できる願書
叔父叔母、祖父母や従兄妹などであるなら親類の枠組みで警察が受理してくれるのだが、生憎珠代は本人も言っていたように名字が同じだけであってかなり遠縁の親戚にあたる
一般的な関係ならきっと冠婚葬祭やお盆の時にどこの人かは知らないけど一応親戚筋らしいおばさんとどこかの家の娘さん、そういうレベルで本来二人は縁遠い間柄なのだ
それが、偶然親しい間柄になっただけで、生憎絵梨と珠代が親類であるとすばやく確実に証明できる方法は現時点で持ち合わせておらず、そのため警察には捜索願は受理されることはなかった
「失礼ですが絵梨ちゃんのご両親は?」
「残念ながら健在だよ。絵梨は両親、特に母親とは不仲でねぇ、高校を出たら縁切りの約束をしていたくらいなんだ。そんな親だ、絵梨がどうなろうと捜索願は出さないだろうし、むしろ世間体を気にして、出したくないとさえ思ってるかもしれないね」
その話を聞いて、桜と郁代は絶句する。二人ともそれぞれ自分の子供たちには大きな愛情を持って接して来ている母親であるからに、絵梨が身を置く状況とそれを良しとする同じ親である者に怒りを覚える
「警察が使えないなら自分の足で探すしかないと思ってね。絵梨が高嶺のやんちゃ坊主……、貴女の旦那だね。その娘と一緒に私のところに遊びに来たことがあったから、まずはと思って今日は来たんだよ」
「そう、だったんですね。私達も出来る限り協力します」
「物騒なニュースもやってますから。桜、貴女は道場お弟子さん達にこの絵梨ちゃんって子を何処かで見なかったか電話で聞いて回って。私は夕貴さんにこの件を連絡してみるわ」
同い年の子供を持つ親として、絶対の協力を約束した二人は早速、自分達に出来る事へと行動を始める
この一度決めたら突っ走り出す性格は二人の子供である悠と郁斗にも見られる一面な辺り、やはり親と子と言うのは似るものらしい
道場の門下生のリストを引っ張り出し、片っ端から事情を説明して情報を共有し始めた桜と、市役所に勤める郁斗の父、夕貴へと郁代は連絡を取り保護の協力とその後の対応等を市の職員に迅速してもらおうという考えだ
その後の対応と言うのは当然、絵梨の両親による育児放棄などを認識してもらい行政機関等に絵梨を保護してもらうためである
「頼もしいね。何もしてあげられない私とは大違いだよ」
そう言って、珠代は目元を拭い、ギュッと絵梨からの連絡がこない携帯電話を握りしめていた
3ヶ月もネタ出しに詰まりました。申し訳ないです……
とりあえずこの章の落としどころをに目途をつけたのでまたローペースですが書いていきたいと思います




