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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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寄り道をしよう


「足はっや……!!やっぱ武闘派女子かぁ」


悠を追いかける絵梨はその女子とは思えない足の速さと人混みを駆け抜けるその運動神経の良さに舌を巻きながら必死に追い掛ける


絵梨もまたどちらかと言えばスポーツ系女子だ。勉学が苦手な代わりに恵まれた体格の良さから繰り出される運動能力は頭一つ出ている


それでも、悠のそれには追いつくのは難しいのだが


「仕方ない、ちょっと早いけど使った方が良いよね……!!」


中々つまらない差に絵梨は一つの決断をして、一瞬だけギュッと目を瞑り、その閉じた目に力を籠める


パッと開いたその瞳は、普段の絵梨の一般的な日本人とは違う




――薄い紫色に輝いていた








「あぁっ、クソッ!!見失った!!」


先陣を切って駆け出した悠だったが視界の遠くに捉えていた男の後ろ姿をとうとう見失ってしまい、思わず口汚く悪態をつく


久々に出た男言葉だったが、そんなことに構っている暇は無く、周囲を見渡して人混みに紛れ込んでないかと探していると


「悠、こっち!!」


「絵梨ちゃん?!」


絵梨にグイッと腕を引かれ、先導するように再び駆け出す

また絵梨の突然な行動に困惑するがひとまず絵梨に導かれるままに進むが


「絵梨ちゃんっ、アイツの場所分かるの?!」


「ふふん、任せて、絵梨ちゃんにかかれば隠れてる人なんてあっという間ですよ。こっちだよ!!」


果たして絵梨の誘導は本当に正しいのかと当たり前の疑問が浮かび、そのまま絵梨に投げかけるが対する絵梨はやけに自信満々に返し、悠を誘導していった


誘導された先は仙台駅の裏手にある高速バスのターミナルだ。タクシーの乗降場もあり、移動手段には事欠かないだろう場所で


「多分、この辺に……」


「いたっ!!」


足を止めてこの辺りにいると言う絵梨を信じて見渡すと、悠はすぐにその男の姿を見つける


男はタクシーの乗降場で手を上げ、やって来るタクシーに乗り込もうとしているのが見て取れる

そこからの悠の行動も早かった


凄まじい勢いで再び駆け出すと、そのスピードで男に気取られぬまま背後に迫ると、そのタクシーを呼ぶ腕を掴み、足を払い、一瞬にして男を地面に縫い付けて見せた


「んなァッ?!」


「見つけたわよ。さぁ、あんたのその荷物の中身と、あの場から逃げ出した理由を教えてもらいましょうか……!!」


ギリギリと締め上げられ、体格差のあるはずの少女でしかない悠を振りほどくことが出来ない男は何が起こったのか分からないまま、地面の上でうめくことしか出来ない


やがてやって来た絵梨に荷物をひっくり返されると、出て来たのは今日の収穫と言うやつなのだろう


10以上の財布がボロボロと歩道のアスファルトの上に積み重なった


「ハイ、証拠確認。後はお巡りさんと仲良くしなよ」


ニッと笑った絵梨の瞳は、薄紫に染まっており、男はゾッと背筋を凍らせるのだった









「掏りをしていた犯人を見事に見つけ、それをまた見事に拘束したことは確かに凄いことでしょう、えぇ凄いことです。ですがそれとこれとは話が別です」


無事、掏りをした犯人を捕らえ、警察に引き渡すことに成功した悠と桃の二人だが、喜ぶのは束の間

仙台駅の中、関係者以外立ち入り禁止のスペースの一角でやって来た婦警さんにこってり絞られていた


「年頃の女の子が!!どんな人であろうと!!犯罪を犯した男性を追いかけて、あまつさえ挑みかかるなんて言語道断です!!どれだけ危険なことをしたのか分かっているのですか!!?」


「すみませんでした……」


「反省してます……」


理由は簡単、婦警さんの言う通り。犯罪者を捕まえるプロである婦人警察官ならまだしも、素人である女子高生二人が犯罪者を自らの手で捕まえると言う危険な行為をそれはそれはみっちりしっかり怒られていた


当の本人である悠と絵梨も最初こそは褒められたことをしたのだと意気揚々としていたが、鬼の形相をした婦警さんににらまれて縮こまっている


如何に悠が大の大人には負けないような武闘家の娘でも、運動神経抜群な絵梨であろうとも、素人は素人


犯罪者と言うのはあの手この手でやり込めてくるような連中なのだ

それを素人である彼女たちがその危険性を認識せずに向かったことに婦警さんは大変なご立腹をしていた


「もし、何かがあったらどうするんですか。貴女達は女の子なんですよ?殴る蹴るだけの暴行だけじゃ済まないことされることだってあるんです。そうなったら、辛い目に合うのは自分達だけじゃないんですよ」


「はい……」


「ごめんなさい……」


「はぁ、もう無茶はイケませんよ?別室でお友達が待ってますから、そちらでご両親を待つこと。学校にもしっかり連絡が行ってますから、これに懲りたら自分達でせずにきちんとまずは大人に相談連絡するように、良いですね」


「「……はーい」」


婦警さんにたんまりとお説教された二人が意気消沈している様子に婦警さんもこれ以上言うことはないと思ったのか、お説教は終わり、別室で待っているという郁斗と桃の元に向かうことになる


各自、両親や学校に連絡が行っているとの言葉に戦々恐々しながらも二人は婦警さんの後に着いて行ったのだった


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