仙台レジャーランド
それよりも問題は外れてしまった水着である。恐らくは流れて着水プールにあるだろうが、このプールは常にウォータースライダーからの強い流れで、イマイチ水の中が不明瞭だ
浮かんでいるにしろ、流れに巻かれて水中にあるにしろ、危ないので一度お客を止めてもらう必要がある
「はぁ~、とりあえず並んでる人はいないみたいだし、上のおじさんに頼んで水着が見つかるまでは人を止めてもらう様に言って来るね。郁斗は悠の艶姿が他の人に見られない様にしっかりガードしときなよ」
ガラじゃないんだけどなぁなんてボヤキながら、絵梨は駆け足でウォータースライダーの頂点まで行く階段を駆けて行く
「悪い小高、俺のパーカーを悠に被せてやってくれ」
「悠ちゃんのじゃなくてですか?」
「こいつのそのままだとサイズがな。俺のなら体格差で身体を隠すくらいにはなるだろ」
「そうですね、ちょっと待ってください」
さっき荷物を一つの鞄に纏めてしまったので、ごそごそとトートバッグの中を漁ると、郁斗の黒のパーカーを取り出して悠にかぶせる
これで、元から少ないとは言え人の目を遮ることは出来る
「少し離れて前も閉めちまえよ」
「……見ない?」
「間君?」
「流石にここで見る程馬鹿じゃねぇーよ……」
意外と信用無いなと郁斗が少しショック受けながらも、桃の援助も受けながらゆっくりパーカーに腕を通して後は前を閉めるだけ
郁斗は約束通り視線を外して、辺りに覗き見ている人がいないかどうかをチェックしていると
「上のおじさん、人来たら止めてくれるってさ」
指導員のおじさんに訳を話してお客を止めてもらうことに成功した絵梨が駆け足で戻って来る
指導員のおじさんは階段を下りて、階段前で止めてくれるとの事で気の利いた人のようだ
「悪い助かる。悠、もう大丈夫か?」
「うん」
「じゃあ、水着探すか」
「間はここで悠のお守り」
「えっ、なんでだよ」
無事パーカーをしっかり着終えた悠を確認して、じゃあ水着探しと言ったところで絵梨が待ったを掛ける
「当たり前でしょ。女の子の水着を野郎が触ったら大恥かくか、気分を害するかの二択じゃない。直接肌に触れてるものなのよ?男が触って良いものじゃ有りません」
「……そうなのか?」
この男、アホなのかと訴えるような目で睨まれたじろいだ郁斗は困ったように未だ抱き着いたままの悠に視線を向け、聞いてみると
「さ、流石に郁斗でも恥ずかしい……」
「いくら気心の知れた人でも、悠ちゃんも女の子ですよ。私も探しますから、悠ちゃんをお願いしますね」
耳まで真っ赤にして応えた悠は恥ずかしさから郁斗の胸板に顔を伏せてしまう。よく見れば、耳どころかうなじ辺りまで赤くなっているので、相当のなようだ
桃もたしなめるように言っているのでここはおとなしくしているのが正しい判断だろう
うーうー唸ってこそばゆいのを我慢しながら郁斗は二人に水着探しをお願いするのだった
「とりあえず離れたらどうだ?」
「ホントに恥ずかしいからちょっと待って……」
ひとまず抱きしめられて身動きが取れない状態から解放は出来ないものかとそれとなくお願いしたが不発に終わったため、諦めてされるがままに郁斗は悠の頭を撫でてやった
しばらくすると水着も無事見つかり、素早く桃がバスタオルにくるんで人目から隠す
次いで絵梨が指導員のおじさんに見つかったことを伝え、四人揃ってぺこりと頭を下げると「はしゃぎすぎも程々になぁ」と笑いながら階段を昇って行った
なんとも人の良いじいさんだと思いつつも時計を見上げたら時間も丁度良く、今日はここで帰宅しようとのことになった




