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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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仙台レジャーランド


「まだ、やるのか」


「もう一回!!」


げんなりとした郁斗の表情などなんのその、悠は喜々として郁斗の腕を引っ張って何度目かのウォータースライダーへと臨む


既に飽きが来た絵梨と桃は勿論の如く離脱済みであり、昼過ぎのカンカン照りの太陽から逃げるように近場のパラソルの下で涼んでいた


「やっぱ体力無尽蔵系だったか……」


「お昼のは減ったバッテリーをもう一回100%にしてたのかも知れないですね……」


「多分充電時80%くらいだと思うけどね」


回数にすると既に10を超えてそろそろ20回目になるだろうかと言うところ


大体8を超えたあたりから絵梨と桃は飽きと疲れを感じたので離脱したが、悠はその体力とまぁ、恐らく性格なのだろう、一つのモノに熱心に取り組むタイプと思われる彼女は郁斗を巻き込みながら延々とウォータースライダーを楽しんでいた


最早監督官のおじさんも引き気味で「彼女さん、元気だね……」と郁斗に同情していた


対する郁斗は「元気過ぎて困ってます」と半ば助けを求めていたが、悲しくもそれと同時に悠を抱えて滑り出したのだった


「間君の水着、今回のでダメになりそうですね」


「あれ意外と擦れるからねぇ。やり過ぎるとお尻に穴空くし」


バッシャーンとまた水飛沫が着水プールに上がり、二人がスライダーを滑り終えたのを確認すると、流石の絵梨も助け船をだしてやろうと、席を立ってプールの方へと向かう


桃も意図を察してか、皆の荷物をサッと一纏めにしてその後ろを追った


「悠―、ハマったのは分かったから間を離してあげなよ。ちょっと疲れてるっぽいよ?悠―?」


着水して上がって来るところで声を掛けると、イマイチ反応が悪い


おや?っと思って改めてプールの中の二人を見ると端の方で悠が正面から郁斗に抱き着いているのが見えた


「ちょっとー、イチャコラしてないでこっちの話聞きなってば。おーい?」


何もこんなところで見せつけなくてもと思うが、あのまま着水プールにいられても幾ら人が少ないとは言え迷惑だ


ウォータースライダーの着水プールは衝突の危険もあるため、さっさと出るのがルールだ

その件も含めて注意しようと縁に沿って二人に近付いたところで絵梨と桃はちょっと様子がおかしいことに気が付いた


「ば、ばか!!動かないでよ!!」


「だからってくっ付くな!?せめて後ろに回れ!!」


「そんなことしたら見えちゃうじゃん!!」


なんだかコソコソと言いあっている様で、なんだなんだと近付いてみたところ


「あー、成る程。間、良かったじゃん、役得」


「来たならちょっと助けてくれ!!」


悲痛気味に喚く郁斗のお腹周りに抱き着く悠、そのトップスが外れてしまっている状態だった


つまるところ、悠は現在、上半身すっぽんぽんの状態なのを郁斗に抱き着いて隠しているのだった

幾ら郁斗でも元を辿れば童貞の健康な男子高校生である


悠の素っ裸を見ていようが、何気なく胸を押し付けられていようが動じない彼でも、『生のおっぱいが自分の肌にじかに触れている』と言うのはテンパるものがあるらしい


しかも後ろから抱き着かれるならまだ感触だけのご堪能だろうが、悠は前から抱き着いている

同い年の女子から見ても豊満な胸部を自らの腹部に押し当てられて柔らかそうに形を変えている光景は、健全な男子には視覚の暴力と言っても差し支えないものだった


「悠ちゃん、はしゃぎ過ぎですよ。水着が緩んでるのも気付かないなんて、郁斗君いなかったらどうしてたんですか」


「う~、ごめんなさい……」


半泣きでしょげる悠に一同は苦笑いするしかない


さっき聞いた話によれば、悠自身、こういった遊ぶこと自体が新鮮で楽しいものだったのは間違いないだろう

ある種の箱入り娘のお嬢様とも言える純粋さも、あの話を聞いた後なら絵梨と桃も納得がいくことだった




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