仙台レジャーランド
「悠は道場、俺はサッカー、それぞれ馬鹿みたいに打ち込んで来たし、半ばそれでお互いどっちが先に夢を叶えるかで競ってた節もあってな。片方が遊びそっちのけで努力し始めたらもう片方も同じようにやたら滅多に努力するってことをやっててな」
「二人ともストイックな性格ですもんね」
「打ち込んだらそれ一筋なタイプかぁ。でも極端すぎない?」
幾らストイックだと言ってもやり過ぎだろうと絵梨は漏らす
確かにやり過ぎだろうと自分でも思うが当時はそのことに全く疑問に思ってなかったのだから仕方ない
学校ではごく普通にクラスメイトと談笑していたし、別にお互いぼっちという訳ではなかった
ただ、悠は家に帰れば道場での指導と稽古に明け暮れ、郁斗もそれに負けじと放課後は遊びよりもサッカーの練習に打ち込んでいたのだ
気が付けば、クラスメイトと仲は良いが遊んだことはまるでないという状況が当たり前になっていた
「それにほら、俺が怪我した時の周りの対応は完全に腫物のそれだったろ?今まで放課後一緒に遊んでた訳でもないし、それ以降も放課後遊ぶって機会は無くてな」
「えー、でも悠ちゃんは悠君の従兄妹ですよね?そこまでストイックになる必要あります?」
「悠がストイックに稽古してたのと同じで悠も実家が道場なんだよ。同じ環境の悠があんだけ強くなってるんだ。負けん気の強い悠ならそれに追従して同じようなことしてても不思議はないと思うぞ。俺も二人とは違うけど滅茶苦茶トレーニングしてたから、殆ど三人で競い合ってた様なもんだったな」
思い出すような素振りをしながら郁斗はボロがあまり出ない様に嘘と真実を交えながら、どうして悠までそんなストイックに過ごして来たのかを話すと桃は成る程と頷きながら、絵梨はふーん?と首を傾げながら、それでも一応の納得はしてそうな様子だった
「まぁ、今は悠も俺も怪我の療養、悠も実家から離れて今はそこまでひっきりなしに稽古稽古って感じじゃなくなったから余裕が出来たんだ。お前らには正直感謝してるよ、俺だけじゃアイツと一緒にどっか出掛けるとかしなかったかも知れないからな」
「んふふふ、もっと褒めてくれても良いだよ?間くーん」
「うぜぇ」
「いたァッ?!」
今も二人だけならこんな風に遊びに出掛けることなんてしなかっただろうことから、悠に仲良くしてくれている二人には感謝していると、郁斗が伝えると絵梨はむふふふと誇らしげに詰め寄るのでデコピンを用いて撃退する
悶える絵梨を他所にすたこらと進む郁斗と桃は並んで先に進む悠の後を追った
「……高嶺君は、まだ帰って来れそうにないですか?」
「悪い、悠のことは俺からも何とも言えない。かなりの大怪我だからな、連絡は定期的に貰うけど今後どうなるかは俺から勝手な憶測は、な?」
「そう、ですか……。何か分かったら教えてください、助けてもらったお礼はキチンとしたいですから」
「分かった。何か分かったら伝える」
何時になるかは分からないけどな、と心の中で騙すことを申し訳なく思いながら郁斗はそっとその言葉を飲み込む
桃は当事者だが詳しいことは全く知らない部外者だ。一度、奴に危害を加えられそうになったことも含め、悠が桃に自身の事を伝えることは無いだろう
「みんなー、おそーい!!」
「分かったからそんないそぐなっつーの」
「ウォータースライダーは逃げませんよ~」
「ちょっとー、デコピンした挙句置いて行くのは酷くない?」
「自業自得だろ」
「うふふ、絵梨ちゃんも早く行きましょう?悠ちゃんが待ちきれないみたいですし」
ウォータースライダーの階段下で「早く~」と騒いでいる悠を見て三人は少し足を速めてそちらに向かう
その様子に気が付いた悠が笑顔を深めたのが遠くからでもよく分かった




