仙台レジャーランド
「でもまぁ、確かにああやってじゃれてるのはよく見るけど、如何にも付き合ってますって感じの甘々な雰囲気って言うのは見ないかもなぁ」
「キスとかそう言うのは全然見ないですね。手を繋いでるのも見ませんし、確かによくよく考えると彼氏彼女というよりは仲の良い兄妹って言った方がしっくり来る気がします」
しかし、思い返してみると二人の脳裏に浮かぶ悠と郁斗のじゃれ合いは付き合っている男女特有の甘ったるい雰囲気ではなく、仲の良い友人や兄妹の絡みに見えて来る
悠からすれば従兄妹の親友、郁斗からすれば親友の従兄妹という微妙に遠い関係であるのにあの仲の良さは何なのだろうかと絵梨と桃は捻っている首を更に捻るだけだ
「電車乗ってる時もさ、悠ちゃんのことどう思ってるのか間に聞いてみたんだけど、アイツなんて言ったと思う?」
「友人だからどうとも、とかじゃないんですか?間君ならそう言うような気がしますけど」
「『絶対に嫌いになることはない』だってさ。桃はどう思う」
「なんであの二人付き合ってないんでしょう」
「だよねー!!そうなるよねー!!」
あくまで距離感の近い友人だと主張する悠と郁斗だが、郁斗の電車内での話を聞いて桃ですら二人が恋人の関係じゃないのかを疑問に思う
「もうそれ、好きって言ってるのと変わらないですよね」
「どちらかと言うとI Love youに近いと思うんだよね。殆ど告白だよあんなの」
決して嫌いになることは無い。と言うのはよっぽど悪どい性格をしていない限り、絶対的な味方であり続ける、という意思の表れだろう
少なくとも二人はそう捉えた。何せあの郁斗だ、性格はどちらかと言うと実直で誠実
誤魔化しはするが嘘をそうそうつくような性格ではないのはクラスメイトと言う付き合いの彼女たちでも容易にわかる
「……悠ちゃんはなんて言うんでしょう?」
「ちょっと想像しずらいけど、少なくとも友達以上の感情は持ってるでしょ」
「水着選びの時、ヤキモチ妬いてましたもんねぇ」
そうすると話題は悠の感情の矛先だが、これはある意味決定的な証拠が水着選びの際に二人も目撃しているのでこちらもまた容易に想像がつく
好意が無ければヤキモチは妬かないだろう
「どっちかというと悠ちゃんは自分のそういう感情に疎そうだよね……」
「あぁ……」
問題は悠が自身のそういった感情に気が付いているかどうかだろう
彼女がストイックに武芸に励んでいるのは本人からも郁斗からも聞いているので、そちらに集中し過ぎて恋愛なんて後回しどころか考えて無さそうな気配すらある
実際、先日のヤキモチも本人は何でそんなにもモヤモヤしているのかまるで分っていなかったので二人のこの予想は的中していた
「もしかして間君、悠ちゃんが恋愛音痴なの分かってるから告白とかしないんでしょうか」
「あぁ、ありそう。自分の感情で悠ちゃんの努力の邪魔はしたくないってやつ。摘心的だけど、ずっとそれなら絶対あの二人、くっ付かないよね……」
「ここは郁斗君に行動させるよりも、悠ちゃんに自覚させた方が近道だと思うんです。悠ちゃんが自覚して、郁斗君にアタックすれば両思いは間違いないでしょうから、きっとイチコロです」
「それは確かに」
こうして、密かに悠と郁斗カップリング計画が絵梨と桃の間で進んでいくのであった
「あの二人、何話し込んでるんだろう」
「結構真面目な顔してるからそっとしとけよ。相談事だったら向き不向きもあるだろ」
「まぁ、そうだね。桃ちゃんと絵梨から話振られたら気にしとこ」
話し込む二人を今度は逆に悠たちの方がなんだなんだと見つめる側になるが、こちらはすぐに視線を外し、二人の会話に没頭する
「ねーねー、今度カラオケいこーよ。あんまり行ったことないしさ」
「ヤダよ」
「あはは、だよねー。郁斗、音痴だもんねー」
「うるせーぞ。他人が気にしてること言うやつにはこうだ」
「うひゃっ?!あっははははは、止めてくすぐったあははははは」
郁斗が周りにバレない様に必死に隠している事をニマニマとした顔でからかった悠がくすぐりの反撃を受けているのを桃と絵梨はまたイチャイチャしてると遠巻きに眺めるのだった




