仙台レジャーランド
「膝、どう?最近は痛がったりとかしてないみたいだけど」
「医者の話だと経過は良好だとさ。じきに走ったりしても痛まなくなるだろうっては言ってるけどそれが何時になるかは何とも言えないって」
「そっか」
ゆらゆらと揺られるがままに流されて行く二人は視線を合わせることなくポツリ、ポツリと会話をする
二人にとってはお互いに気を使う話題に揃って自然に会話をしている風を装っているのは不器用で若者らしい
「サッカー、出来る様になると良いね」
「お前も、元に戻れると良いな」
そう言うと二人はどちらからとも言えない程の同タイミングでクスクスと笑いだす
揃いも揃って気が長くなりそうな厄介を抱えたものだと自虐も込めながらだが笑い声は二人の間の雰囲気を和らげる
「おらッ」
「きゃっ?!」
和らげた雰囲気が郁斗の悪戯心を何気なく刺激したのか、前触れもなく悠の乗った浮き輪をひっくり返すと輪の中に座る様にして収まっていた悠は成す術もなく水の中に落ちる
「ちょっと!!」
「ハハハッ」
「待てこらー!!」
落とされた悠は当然議するが郁斗は笑いながらその場から流れに乗って逃亡を始め、悠もそれを追いかける
キャッキャッと騒ぎながら戯れること十数分、仲良く息が切れるまで騒いだ二人は一緒に浮き輪に掴まり再びゆらゆらと揺られながら流れに身を任せる
「さっきの話の続きだけどさ」
「ん?」
「もし、私が元に戻れなかったときはさ、貰ってね」
「何に」
「お嫁に」
「……また唐突だな」
いきなりすぎる話について行けないと言わんばかりの呆れた表情をする郁斗はそんなことを言いだした理由を悠に求める
「郁斗ならまぁ、良いかなって」
「アバウトだなおい。そんなんで良いのか」
「だって郁斗だし」
「理由になってねぇよ」
何言いだしてんだコイツとますます呆れを深めて行く郁斗の様子にすぐ隣で同じ浮き輪に腕を組んで寄りかかっている悠は顔を郁斗の方に傾け、薄い笑みを浮かべ
「私がお嫁になるのは、嫌?」
「……別に嫌じゃねぇよ」
その表情に一瞬見惚れた郁斗はハッとしてから不貞腐れるようにして応える
「じゃあ、その時はよろしくお願いします」
「……はぁ」
応えに満足したように笑う悠に郁斗は頭をガシガシと掻きながら溜め息を吐くしかなかった
見惚れた儚げな表情が郁斗の脳裏に妙に焼き付いていた
「うーーーーーーーん」
「どうしたの絵梨ちゃん?」
同じ頃、遊び疲れてさんさんと降り注ぐ太陽光を遮るパラソルの下で休憩していた絵梨と桃の二人。特に絵梨の方が何やら険しい表情をしながら悠たちのいる流れるプールの方を睨んでいた
「二人になった途端良い雰囲気になられると、私達ってめっちゃ邪魔してるんじゃないかとか、あれで付き合ってないのかとか、鈍感とかそういう次元じゃないなって思って」
「あー」
絵梨が睨む先にいるのは追いかけっこを楽しんだ後、一緒の浮き輪に並んで掴まっている悠と郁斗だ
傍から見なくともただのイチャイチャしている美男美女カップルにしか見えない二人の様子にもしかして自分たちは大変お邪魔してしまっているのではなかろうかと邪推していたのだ
「あの二人が言うには別に付き合ってる訳じゃなくて、そう思わせておいた方が告白される回数とか、面倒が減るからって言ってたけど……」
「毎度思うけどあれで付き合ってないって言うのが正直信じられない」
「私もそう思うよ……」
ハッキリ言って付き合っていない男女の距離感ではない。悠の従兄妹の悠が郁斗とも多少の交流があるのはまだ理解が出来ても、それならば年相応、或いは異性相応の距離感があるはず
その距離感が綺麗さっぱりない二人の間柄で付き合っていないと言うのはやはり、絵梨達にとっては何とも奇妙な話だった
実際のところは本来なら同性であり、親友である上に悠が郁斗に頼らざるを得ない状況が自然と二人の距離感を縮めているという恋愛的な要素が薄い事実が合ったりするが、それは絵梨と桃にはとてもじゃないが察することの出来る内容ではない
また間が空いてしまって申し訳ないです……
ストーカーってホントにいるんですね(白目




