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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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仙台レジャーランド

いつもふざけている絵梨だが、こうして友人のことには真面目に話す友人思いの優しい人柄が垣間見え、郁斗は素直に悠が良い友人関係を持てているのだなと認識を改めていた


「それをお前が知ってどうする?」


「どうもしないけど、気になるじゃん」


「どうもしないなら無駄な詮索はしない方が良いぞ。お前にだって人に話したくないことの一つや二つあるだろ」


「そりゃ、そうだけど」


俯く絵梨にも、郁斗にも恐らく桃にも友人や親にも相談できない悩み、と言うのを抱えているだろう

これは人間なら当たり前に存在する悩みであり、簡単に相談できないからこそ誰にも相談せずに悩み続けて答えを出すのである


悠のことはあまりにも特殊な事情ではあるが、他人に容易に打ち明けていい問題ではないと言う点で共通している


人に話せない、話しても仕方ないなどこの手の悩みや秘密には様々あるがそれらは結局本人が妥協や答えをそれぞれ出すしかないのだ


「悠と俺の関係もそういう無闇に詮索してほしくないデリケートな話なんだ。悪いが本人の口から話す時まで知らないフリをして欲しい」


郁斗も悠が本心では現状をどう思っているのかは聞いていない。それでも悠は自分なりに考えて行動し、足掻いている筈である


「それは悠が大切だから?」


「あぁ」


それなら、それを支えるのが郁斗が自分に課した役割であり、かつて『自分もそうして悠に救われた』事に対する恩返しだった


「……分かった。少なくとも私が口をはさむ余地は無さそうだね」


「悪いがそう言うことになる」


「ん、仕方ないね」


理解はできないが納得はした、といった具合の様子で絵梨が肩を落とすとまるで今までの話は無かったかのように知らん顔で外の景色を眺め出す


こういった飄々とした性格も郁斗は素直に悠の友人としては心強いと改めて認識する


「間はさ」


「なんだよ」


視線は窓の外に向いたまま、絵梨が再度話しかける

郁斗も絵梨へと視線は向けないまま、返事をする


「悠のこと、好きなの?」


「……さぁな」


こればかりは郁斗も言葉を濁す


仮にも元男で親友で恋愛だとかそういう状況に本人がいられないというのもある

郁斗ととしても別に恋愛感情を向けている、というつもりはない


ただ、親友として誰も感じた事のないだろう苦難に立ち向かっている悠を放っておけないと言うのは事実


「ただ、絶対に嫌いになる事だけは無いな」


一際大きなため息が聞こえたような気がしたが、郁斗は聞かなかったことにし


「それって、もう恋とか好きとか通り越してるじゃん」


次に絵梨が何かを小さくぼやいたような気がしたのだが、それは電車のブレーキ音にかき消されて郁斗の耳には入って来なかった








「うっはー、ほぼ貸し切りー!!」


電車に揺られて一時間。あの後なんだかんだで一つのボックス席に集まり直し、他に乗客が少ないことを良いことにトランプなどを楽しんでいた四人は無事仙台レジャーランドへと到着し、そのプールエリアへとやって来ていた


やはり閉園してしまう直前、と言うのもあり人は閑散としており他のプール施設と比べてかなり自由に遊べそうで、更衣室から飛び出した絵梨が貸し切りといってしまうのも頷けるレベルだ


「待ったでしょ?」


「気にすんなよ。野郎は脱いで着るだけだからな、こっちが早すぎるんだよ」


更衣室の外で既に水着になって待っていた郁斗に悠が声を掛けて二人は並んで園内を改めて見渡す


主にこのプールには6つのアトラクションと二つの一般的なプールで構成されている様でまずは何処に何があるのかをざっくりと園内地図を見ながら見返してみることにする




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