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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
プロローグ
7/206

どうしてこうなったのか

「悠ちゃん、着いたわよ」


「ふがっ、ん?着いた……?」


縁側で寝こけていた悠が次に起きたのは車で1時間程先にある大型のアウトレットパークの駐車場

寝ている間にいつの間にかに車に乗せられていたらしく、桜の膝を枕に熟睡していたようである


とは言え、車の中で寝ていたのだから体は少々凝り固まっているようで悠がグッと伸びをするとパキパキとあちこちの関節から音が鳴る


「ほら、早くなさい。悠ちゃんの物を買いに来たんだから」


「買わなきゃダメ??」


「ダメです。新ちゃんも運転ありがとう、お礼に何か買ってあげるわね」


やんわりと買いたくない旨を幾度となく伝えてみる悠ではあるが、今回も敢え無く撃沈して新一が運転して来たミニバンから降りる


笠山市と隣接する街はは所謂地方都市に分類されるそこそこに発展している

住宅街と田んぼや畑と言ったちょっと発展した田舎といった具合の笠山の街並みより、やはりこちらの街の方が建物の規模や道幅が大きい


悠たちが今いるアウトレットパークもそれに類するものだ


アウトレットパークと言うのはシーズンが過ぎて売れなくなってしまった商品や、生産流通の段階でちょっとしたほつれや汚れがついてしまい不良品となってしまった商品を定価から値段を落として販売する店舗を多く集めた大型商業施設


多くは服飾品であるが、中には台所用品や雑貨、家具と言った物も取り扱うショップもあり、しかも安く手に入るのであるから、今回の悠のように急遽衣服を取り揃えなくてはいけなくなったのならありがたい場所である


「さて、まずは悠ちゃんの下着からね。お洋服を買うにしても何にしてもちゃんと採寸しなきゃいけないのだし早速行きましょ」


「え゛っ」


「強く生きろ、兄からはそれだけだ」


薄情者と恨めしい声を上げながら悠は桜にランジェリーショップへとズルズルと引き摺られて行った

男性である新一は流石に着いて行くことははばかられるのでその場で元弟、現妹の情けない姿を目にしながらアウトレットに来たついでに新しい服でも買おうと悠たちとは反対側に歩いていった


なお、剛は道場の時間が近いため今回は同伴していない




「母さん、俺にはここはレベルが高すぎる」


「適正レベルよ、安心なさい」


文字通り引き摺って連れて来られた悠はランジェリーショップの前まで来て、改めて慄く

ついこの間まで全く関係のなかった、関係してしまうと漏れなくお巡りさんに連れていかれても仕方のないとも言える女性だけが気兼ねなく入れるその場所は悠にとってはどう足掻いても未知の領域であり、同時に魔窟でもある


「母さん、俺、男」


「立派なおっぱいぶら下げてるんだから諦めなさい」


ぐうの音も出ない反論に負けて悠は結局店内へと踏み入る

全体が薄いピンク色で統一された店内は数人の女性スタッフと同じく数人の利用客がいる


周りは当然ブラジャーやショーツと言った女性用下着で溢れており、そこに男性的な気配は欠片たりとも存在しない


そんな店内の空気に既に悠は及び腰になっており、不安げに桜のすぐ後ろをキョロキョロしながら着いて行く


「うー、私変じゃない……?」


「変じゃないから落ち着きなさい」


周りに人の目もあるため悠は一人称を俺から私に改め、不安そうに桜に問いかける


一人称に関しては昨日の話で決めたことで少なくとも人前では【俺】と言う一人称は控える約束になっているのだ

これは女性の身体になってしまった悠が周りから浮いてしまわないようにするための最低限の予防措置で桜からは特にきつく言いつけられていることの一つである


私やウチ、ボク、または自分の名前を一人称にしている女性はいるが、俺を一人称にしている女性は中々いない

ただでさえ女性としての生活に慣れている訳もない悠が俺などと呼称してしまえば変に浮いてしまう


別に(ハルカ)(ユウ)であったことを隠そうというわけではないのだが、無用な混乱と騒動は避けるべきであるし、何をどう説明したら当事者たち以外にこの現状を説明できるのか


そういうことも含め、悠は一人称を少なくとも人前では変えるようにしている

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