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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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仙台散策と最初の再会

「悠!!悠!!」


盛大に空き店舗のドアをぶち破って床に倒れている悠に慌てて駆け寄り、抱き起した郁斗は焦りを隠さぬまま悠の身体を揺り動かし、声を掛ける


「は、間君。怪我してるかも知れないからあまり動かさない方が……」


「あわわわわ……、わ、私、大人の人呼んで来るね?!」


郁斗に比べると冷静な桃が激しく悠の身体を揺り動かす郁斗を諭し、絵梨は大人を呼びに空き店舗の外に出る。もしかしたらさっきの破砕音で異変に気付いた大人がいるかもしれないし、そうでなくても商店街まで出れば大人はたくさんいる


警察を呼ぼうにも、救急車を呼ぼうにもこういったものは子供だけで行うのは極力避けるべきとされており、事実悪戯だと勘違いされたり、緊急性が無いとして後手後手に回されたりすることもある


「おじさん!!こっちこっち!!」


「どうしたんじゃて……?!こりゃ大変じゃ!!すぐに救急車呼ばんと?!」


「あと警察も!!」


絵梨が引き摺って来た中年の男性は大穴の開いた空き店舗の中を覗いて、女の子がぐったりと倒れているのを見て急いで119番を携帯電話でダイヤルし、絵梨が警察にも連絡するようにお願いする


「悠!!起きろ、悠!!」


「悠ちゃん、聞こえる?」


桃の制止を聞き、悠の身体を回復体位と呼ばれる身体を横向きに寝せるような体勢にして悠に声を掛け続ける二人に今の時点で悠が目を覚ますことは無かった











悠が目を覚ましたのはその4時間後、時間にすると大体15時を過ぎた頃の事だった


「ん、んん……?」


悠の視界に映ったのは何時だがお世話になった見覚えのある天井と心配そうに手を握る母桜の姿


「あぁ、悠ちゃん良かった……!!」


「むぎゅ?!」


目が覚めたと分かるや否やギュッと悠を抱きしめ、驚いた悠が虫がつぶれたような声を上げる

ついでに身体が軋む様に痛いが耳元で聞こえる啜り泣きの声を聴いてしまっては無下に振り払うことも出来ない


「起きたか」


「うん、ゴメン、心配かけたね」


桜に抱きしめられたままどうしたものかと悩んでいると病室の扉が開き郁斗が顔を出した

なんともない風を装ってはいるが何処か余所余所しい辺り、郁斗も相当心配していたことを察し悠は申し訳ない気持ちになる


「桜さん、悠も怪我してますからその辺で……」


「あぁ、大丈夫大丈夫。咄嗟に【黒檀(コクタン)】使ったから怪我はあんまりいだだだだっ?!お母さん、急に何するのさ!?」


怪我がないことをアピールしようとした悠は桜の手により首や背中の節々を刺激され、そこから生み出された痛みに悲鳴を上げる


大怪我、と言える外傷は確かに無いが打ち身や捻挫などはあれだけ吹き飛び空き店舗の木製扉を突き破ったのだからあって当然


むしろその程度で済んだことが非常に幸運と言える


「何が怪我はあんまりなの!!いくら防御用の【名付きの型】を使ったからと言って衝撃が全部相殺された訳じゃないでしょう!!その証拠に貴女吹き飛ばされたんですからね!!……ホント、ホントに心配したのよ」


桜にしては珍しく大声での叱責に悠は思わず身を固くし、後半の震える声とその今にも泣き崩れそうな表情を見て自身の軽率な発言を反省する


黒檀(コクタン)】は一撃必殺を流儀とする高嶺流の【名付きの型】において数少ない防御用の型であり、本来を一撃必殺とするなら、この技はその一撃必殺を相殺させ、不発に終わらせる堅牢さを誇る剣技である


それを以てしても5m以上吹き飛ばされ、悠の記憶には無いが木製の扉を突き破ったことを考えれば、やはり全身の打ち身や捻挫程度で済んだのは奇跡的とも言える


日頃の鍛錬の成果か、あの男がそうなる様に仕向けたのかは分かり様がないが、一歩間違えれば大怪我どころでは済まない状況を伝えられていたであろう桜にとって悠が目を覚まさない4時間は気が気でなかったに違いない


「……心配かけて、ごめんなさい」


とてつもなく申し訳なくなった悠も何だか泣きそうになってしまい震えた声で謝り、未だ抱きしめる桜の肩に顔を埋めた



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