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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
プロローグ
5/206

どうしてこうなったのか

「THE・美少女」


「お前それ言ってて悲しくないか?」


看護師が持って来た姿鏡を見て悠は率直な感想を漏らす

兄である新一はその様子にため息交じりの言葉を投げかけるが、当の本人は気にした様子もなく、姿鏡の前でくるくると回ったりポーズを決めて見せたりしている


悠の発言自体はごもっともなもので、その容姿は美少女と言って遜色ない

おそらく母の桜譲りになるのであろう艶やかな黒髪はクセもなく手櫛で毛先まであっさりと通すことが出来るくらいにサラサラで、長さも背中の中程まである十分なロングヘア―


顔はどちらかと言うとスッキリとしており、兄の新一とこちらは何処となく似ているようだ

目元は少々垂れ目がち、ここは桜譲りで口や鼻筋も整った、少々大人しそうな印象を受ける


髪や輪郭とは打って変わって手足はアジア系の太く短い感じではなく細く長い、身長は160㎝に届かない位のごく一般的な日本人女性のそれだが、その手足の長さでビシッと決まるモデル体型である

本物のモデルは身長もあるので並ばれるとちんちくりんに見えてしまうだろうがそれはまた別の話である


肌は日本人にしては色白、欧米人にしては黄色なよく言えば日本人受けする、悪く言えば中途半端な肌色だ

スリーサイズと言うやつは流石に把握できないが、服の上からでもハッキリと胸のふくらみが分かる上に、悠の視線からすると胸が邪魔で足元が見えない


お尻はキュッと引き締まっていてウェストも細いように感じているが、女性の相場は知らないのでとりあえず美少女、という感想に悠は落ち着いた


「落ち着いたもんだな、親の俺らですら困惑してるのに」


「んー、まだ実感わかないってのもあるし、現状気にして改善されるわけでもないしね。つーか親父たちは俺の事を悠だってよくわかるね?普通信じないでしょ」


「それはね、なんか緊急隊員さんが悠の身体の変化に気づいて慌てて郁斗君の携帯電話を借りて、カメラで撮影したんですって。そりゃ、私達だって最初は疑ったけどあんな映像を見せられたんじゃ納得はともかくとして、事実を認めるくらいはね」


それに郁斗や牧野先生もこの現象を間近で見ていたと言うのだから、その証言も有って高嶺家一同は今目の前にいる女の子を自分たちの家族であると認知しているようである


「とりあえずは明日しっかり検査してもらって、何もなければおうちに帰りましょ?女の子になったのだから服とか買わなくちゃいけないし、しばらくは忙しくなりそうね」


「ははは、お手柔らかに」


なんでかご満悦そうな桜に少し嫌な予感と言うものを感じて苦笑いをして返した悠は面会時間ギリギリまで家族と談笑した後、看護師の指示に従いながら病院で一夜を過ごした













「身体はバッチリ健康体って話です」


「そうか、それじゃ家に帰るぞ。母さんが何だか張り切ってるから早く帰らないとどやされそうだ」


翌日、病院での検査を終えて医師から怪我も病気も見受けられない健康そのもの、と太鼓判を押された悠はそのまま退院となり、迎えに来ていた新一の車に乗り込む


「お医者さんはなんて?」


「身体は健康。だけど前例がないから暫くは一か月に一回くらいのペースで検査に来てだって。後、今回の件は勿論口外しないってのも。まぁ、こんなハチャメチャな話なんてゴシップ記事にもならないだろうけど」


市内でも有数の大きな病院のロータリーから車を出せば、見知った町の風景が悠の視界に映る

笠山高校の大事件から一週間、少々パトカーが普段より行き交うような気がする程度で特に代わり映えのしない街並み


「なんだかんだで不安だろ?」


「うっさい」


ぼうっと窓の外を眺めている悠に新一は確信めいた口調で問いかける

悠は口数少なく強めの語気で返すだけ


その様子に新一はふっと笑みを浮かべるとハンドル操作を右手に任せてわしゃわしゃと乱雑に悠の頭を撫でる

止めろ、なんて言いながらも払い除けることはしない悠は手櫛で乱れた髪を軽く整える


ちょっと和やかになった空気を連れて、車は帰路へと走っていった

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