仙台散策と最初の再会
そうして楽しくお喋りをしている内に時間はあっさりと過ぎ、約30分の道中は目的地の仙台駅に到着する
「いやー、流石に仙台は都会だねぇ」
地元笠山の駅と比べると地下から新幹線のホームまで備えた東北最大の都市に構える仙台駅は文字通り格が違う
鉄筋とは言え、平屋の在来線しかない田舎の駅と地方政令都市に指定されている都市の駅を比べるのはそもそもに求められている物が違うため御門違いとも言えるのだが
「で?どこか目的地はあるのか?」
「もちろんありません!!」
ホームを出て、中央改札を潜って正面の出入り口からペデストリアンデッキと呼ばれる大きな歩道橋のようなデッキまで出て来たところで、悠達は絵梨特有の考え無しな行動に各々肩を落としたり頭を抱えたりした
「目的地ないのに朝から集まってどうするの?ウィンドウショッピングにも限界があると思うけど」
「その時はカラオケとかで良いんじゃない?」
「……そうですか」
「あははは……」
カラオケなら地元の方が安いじゃないかと言いたくなるのを堪えて飲み込んだ悠とあまりの計画性の無さに苦笑いしか漏れていない桃を見ても絵梨はきょとんとした表情を見せるだけで自分が原因を作ったとは欠片も思っていないようだ
因みに郁斗はそうそうに匙を投げて一人携帯を弄っている辺り、潔いのか情がないのか
どちらかと言うと彼が気にかけるべき対象はあくまで一人だけであって、他は深く干渉する気も無いのかも知れないが
「じゃあとりあえず駅ビルと商店街、どっちに行くの?」
「商店街でいいと思いますよ。駅ビルや駅ナカより色んな種類のお店がありますから」
「よし、それじゃクリスロードまで行きますかー」
「あ、ちょっと絵梨ちゃん?!」
われ関せずの男子一人を放っておいて、女子三人はサクサクと行き先を決めて絵梨が駆け足で行ったのを桃が慌てて追いかけていく
「決まったのか?」
「商店街をぶらつこうってさ。郁斗にはちょっときついかもね」
「女の遊び兼買い物なんてそんなもんだろ。正直、お前が行くから着いて来ているようなもんだしな」
手に持っていたスマホの画面を閉じ、ポケットに閉まった郁斗はスクッと立ち上がると手慣れた動作で膝に置いていた帽子を被り直し、悠の隣に立つ
一連の動作で周囲にたまたまいた女子グループから一瞬色めきだった声が聞こえたが、その隣に悠がいると分かるとそれは途端に落胆の声へと変わる
「やっぱりカップルって奴に見えるのかな?私達」
「男女二人だけでいるだけで周りは勝手に邪推するもんさ。俺らにとってそれは逆に旨味が多いって話はこの前もしただろう?」
既にだいぶ先まで行っている絵梨や桃を一応、視界に納めつつ。二人はのんびりと商店街の方まで歩き出す
早く出てきたせいでどうせ時間は有り余っているのである急いでも暇を持て余すくらいならのんびり行った方が後々楽だろう
「商店街、って言うと何かメインになるモノあったっけか?」
「黒松もなかとか?」
「随分ジジ臭いのが出て来たな……」
ひとえに商店街言えど、このクリスロードを始めとした仙台の商店街は中々に長く、そしていくつかの商店街が交差していることもあって複雑なアーケード街を形成している
近年聞くシャッター街とは程遠く、ほぼ全てのテナントに何らかのお店が入っているところは他の東北地方の商店街では見られない光景でもあろう
「遅いよー、早く行こうー」
「そんなに急いでもやることも何も決まってないんだから暇を持て余しちゃうだけでしょ?それとも、お昼前に解散になりたい?」
「それは嫌」
「じゃあちょっとのんびり行きましょうか。入ったことのないお店に入ってみるのもいいかもしれませんね」
「店の開拓って訳だ、それなら面白そうだな」
待ちぼうけていた絵梨を諭し、出来るだけのんびりと行くことにどうにか決まった一行はペデストリアンデッキを降りて仙台市街の商店街の入り口、クリスロードへと入って行った




