表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
44/206

仙台散策と最初の再会

結局駅に着くまでの間はずっと騒いでいた悠と絵梨はようやく人目に気付いて騒ぐのを止めるとそそくさと離れて後ろの二人と合流する


「ようやく静かになったな」


「分かってたなら教えてくれてもいいのに」


口を尖らせる悠を尻目に郁斗は二人分の切符を買い、悠に手渡す。現在、絶賛おこづかいが減額中(最初の一か月間に行われた桜の女子力指導の結果)である悠にとって電車代ですらそこそこに手痛い出費である


カフェでのホットサンド代などの食費は自分で出すが、こういった細々としたところは今のところ郁斗に借りて誤魔化していた


「二人とも―!!そろそろ電車出ちゃうよー!!」


既に改札を通り過ぎている絵梨が大声で二人を呼ぶ。彼女はただでさえ目立つと言うのにどうにも目立つ行為と言った物にためらいが無いようだ

いや、むしろ目立つことに慣れているからこの程度の事では多少の差異程度にしか感じないのかもしれない


「ほら、行こうぜ」


電車の発車まで時間も無いと言うのもあり、郁斗は早足で改札口まで向かう

自動改札に券売機で買った切符を通し、スムーズに通り過ぎた郁斗がふと後ろを見ると


「わっ?!」


見事に自動改札機のバーと警告音に阻まれてる悠に何をしてんだかと呆れるのだった


「間違って裏表逆に入れてた」


「東京の改札はそれでもいいけど、田舎の改札はそれだと通らないからな?」


割と初歩的なことで詰まり、テンパっていた悠を救出して早足から駆け足へと変わった一同が目的のホームまで着くと電車は発車の1分前。ギリギリの到着だった


「まさか悠の凡ミスで走ることになるとは思ってなかったよ」


「ごめんごめん。実は機械ってあんまり得意じゃなくて」


機械が苦手とかそういうのは先程のミスとは関係ないのではなかろうかという三人の疑問は胸中に秘めたまま、電車は無事に四人を乗せ、隣の大きな町へと向けて出発する


車内は土日、という事もあるのかはたまたそれとはまた別の要因か

すし詰めとはいかない物の満員と言って差し支えない乗車率であり、必然的に四人は入り口付近に固まることになる


人の出入りの激しい入り口付近には出来ればいたくないものだが、こればかりは仕方のないことだ


「悠、お前ちょっとこっち来い」


「ん?」


ドアも締まり、これから電車が出ようかとしたところで郁斗は悠の手を引くとドアと自分の身体の間に悠を挟む位置取りをした


「お、流石はモテ男。女の子のエスコートには慣れてますね」


「コイツ無防備だからな。いないとは思うけど予防策はして然るべきだろ」


悠と同じく、絵梨とドアの間に挟まれてる桃と一緒に悠は目を白黒とさせて理解のできていない現状の把握に努める

一体今の行動の何がモテ男的要素だったのか


気付かない二人に別に教える義理も無い郁斗と絵梨が行ったのは四人とは関係のない、第三者の接触を避けるための壁的役割だ


もっとストレートに言うと痴漢対策、という事である


まだ女性としてのガードの甘い悠に、如何にも大人し気な雰囲気の桃はこういった痴漢行為の恰好の的に映ることだろう。別に周囲の男性が痴漢だと疑っている訳ではないし、そうそうこんな田舎のたまたま出くわした満員電車に痴漢がいるとは思わないが、余計なトラブルを減らすための予防策としては十分な効力を持つものだろう


「え?なに、どったの?」


「今も分からないなら言っても仕方ないから気付いた時に教えてやるよ」


最後まで分からなかった悠にはもう何度目かもわからない苦笑いを漏らしつつ、電車は無事に発車した



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ