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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
43/206

仙台散策と最初の再会


「納豆とアボカドって合うんだな」


「外れ覚悟で頼んでみたけどかなり美味しかったね。具だくさんだし、値段もリーズナブルだしで文句なんて言いようが無かったね」


カフェ【illuminare】での朝食を手早く済ませた一同は移動のためにお喋りもそこそこのところでお会計を済ませてお店を後にした


初めて行った悠と郁斗はカフェの雰囲気の良さとメニューの味と値段を大絶賛中で、このぶんだと近々また行きそうな様子さえある


「ご満悦してもらえたようで何よりだよ~。こっちとしても熱々でラブラブな二人を堪能できてもうお腹いっぱいです」


「だから、あれはわざとじゃないんだって言ってるでしょー」


歩きながらくねくねと身体を捻じる絵梨に悠はふくれっ面になって反論する


絵梨の言う、熱々でラブラブな二人とは悠が頼んだ納豆とアボカドのホットサンドと郁斗の頼んだベーコンとポテトのホットサンドが届いて少し経った頃に起きた事を指していた


「いやー、うら若き乙女が仮にも異性に口を付けた食べ物を気にもせずに食べさせて、しかも郁斗君も何気なく口にした挙句その時のセリフが『あ~ん♡』だよ?これはもう、ねぇ?」


「何がねぇ?なのさ。確かに何にも考えずに食べさせたけど明らかに語尾に♡が付くような声は出してないからね!!?」


駅に向かう道すがらにギャーギャーと騒ぐ二人の後ろを郁斗と桃の二人は呆れたような笑みを浮かべ、軽く肩を落とす


二人とも、公衆の面前と言うのを忘れているのか結構な具合に通り過ぎて行く通行人の生暖かい視線を受けている事には気が付いていないようだ


「……ホントに普段からあんな感じなんですか?」


「あんな感じなんだよなぁ」


普段から異性の壁、というモノが薄い、或いは殆ど無い状態の二人にとって事情を知らない人達にとっては仲睦まじいカップルのそれに見えるわけだ


勿論、全部が全部、悠が男だった頃にも行っていた行為ではない。元々悪戯好きな一面があり、男同士としては割とボディタッチが多かったのかも知れないが(背中にのしかかってみたり、肩を組んでみたりなど)


それでも今ほど突拍子もない行動はしていなかった。今回の『あ~ん♡』事件もそうである


「慣れない環境でストレスが上手く発散出来てないと思ってるんだ。ああやって俺をからかって遊んでるんだと思う。本人に自覚は無いかもしれないけどさ」


以前にも言ったように悠のこういった一連の行動は女性という慣れない環境で上手くストレスが発散できず、意識、無意識はともかくとして郁斗を異性的な言動でからかって遊ぶ、といったストレスの発散の仕方をしているのだろうと郁斗は思っている


もしかしたら、自分が女性であることを意識させるための打算的な行動もあるかも知れないが、よもや一介の学生がそこまで考えが及ぶことも無いだろう


「まだしばらくは俺にべったりだろうから、もし何かあったら小高達に悠は頼むわ」


「ふふっ、分かりました。彼氏さんからのお頼みとあれば私も断れませんし」


「おいおい、小高さんまでからかわないでくれよ……」


呆れから辟易した表情に変わった郁斗を見て、桃はクスクスと笑うとまだ騒いでいる前方の二人へと視線を移す


「大事にしてるのは、変わらないですよね?」


「そりゃ親御さんから頼まれてるし、幼馴染だしな」


にししと珍しい笑い方をする郁斗を見て、桃はその表情に一瞬影を落とす


「その気持ち、大事にしてくださいね。気付く、気付かない。伝える、伝えないにしろ、目の前からいなくなっちゃったらどうしようも無いですから」


そう、小さく小さく口にする


あまりにも小さいその言葉は初夏のまだ少ない蝉の鳴き声にかき消える

想いに気付くのも、伝える時間すら与えられなかった少女の沈痛な面持ちは誰にも気づかれることは無かった



一か月もの長い間音沙汰もなく、大変失礼いたしました。

本日より、順次更新を再開してまいりますのでまたよろしくお願いいたします


悠と郁斗とその周りが作るハチャメチャな物語をどうぞ楽しんでください

2016/7/4 伊崎 詩音

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