仙台散策と最初の再会
色々と思うところのあったその翌日。絵梨からの早朝からの招集に悠は不機嫌そうに眉根を寄せながらも出掛ける準備をしていた
「全く、絵梨ってば土日に遊ぼう以外言わずにその後は連絡もしなかったクセに朝いきなり9時に駅前とか言われても大慌てで準備するこっちの身にもなって欲しいもんだよ」
ぐちぐちと文句を溢す悠はこういった突然の予定変更をさせられるのが結構嫌いな性質でしかも朝方ハイテンションな電話で突然集合場所と時間だけ伝えられたのだから尚の事機嫌が悪い
そうしてぐちぐちぐちぐちと文句を垂れ流しながらも悠は今日のコーディネートをパパッと決めていく
今日は朝から日差しが強めで気温も高くなりそうだ
梅雨明けこそまだ宣言されてなかった筈ではあったが天気予報も今日は一日晴れ。念のために折り畳みの傘一本持っておけば良いくらいだろう
「うーん、今日はちょっとカッコよく行こうかな」
そう言って箪笥の中身を見ながらチョイスしたのは大きな錨のマークが入った襟元や腰元がダボ付いたノースリーブのカットソー(Tシャツ)。色は白っぽいグレーだ
それに合わせるボトムはちょっと派手なエメラルドグリーンのパンツをあわせる
このパンツはふくらはぎ辺りでこれまたダボ付いた状態になり、七分丈位の長さになる
今日は全体的緩くダボ付いた、ちょっと男の子っぽいカッコよさを出したコーディネートのようだ
それを表すように白のスポーツキャップも取り出されている
「ブレスレットは紐とか革製の奴をちょっと多めにして……。靴はウェッジソールがあったからそれにしよ」
慣れた手つきであれやこれやと言う間に服装を決め、うっすらとメイクをする
するのは目元にアイラインを入れたり、まつ毛を持ち上げたり、眉を整えてペンで描いたりなどの簡単なものだ
若いころからのがっつりメイクはお肌に悪いとの桜からの仰せである
正直、悠はファンデーションなどは使う気は今は無い。何たって素材が良い。元が良いなら化粧は化けさせる魔法の手段ではなく華やかさをプラスするアクセントで十分なのだ
髪の毛もバッチリアイロンでちょっと無造作にバラけた感じになるように一房を小さくして巻いて行く
終わったらアイロンが取れないようにスプレーを吹きかけて準備完了である
これがちょっと前まで男子だった者の早業かと思うほどの手際の良さは果たして桜の調教が凄いのか、悠の順応能力が凄いのか
かくして時刻は八時半。何とか間に合うかどうかの時間で日焼け止めをささっと塗り、必要なものを入れたクラッチバックを手に悠はそそくさと高嶺家を後にする
「……我が弟の面影は何処に行ったのやら」
「なんかお洒落楽しいみたいよ?気が付いたら自分で勉強してるんですもの、お母さんびっくりしちゃった」
どうやら、悠の順応能力が凄いようだった
「ゴメン、遅くなった」
「気にすんな。女の支度は時間がかかるからな。早く乗れよ」
玄関を出て待っていたのは自転車に跨る郁斗だ。普段は特に整えていない髪をワックスで立て、整えるだけでそのイケメンオーラはマシマシとなる
普段からそうすればいいのに、と悠が一度言ったことがあるが本人曰く「めんどくさい」とのことらしい
郁斗のコーディネートはブラック×ネイビーのシックで大人な印象を与えるものだ
ネイビーの半そでTシャツに黒のチノパン、Tシャツの下からレイヤードスタイルで下に来ている白のタンクトップの裾が挿し色になっていて重い色合いを軽くしているようだ
首元にはシルバーのアクセサリーが光り、腕にはこれまたシックな黒革のベルトが印象的な時計が納まっている
極めつけは今は自転車の籠に納まっている黒のファイクスエードハットだ。一般的に中折れのつばが広めな、良く紳士が被っていそうなお洒落度の高いアイテムである
このイケメンは服装も昔からイケてるタイプでそれがまた女子にモテる要因だった
かつての悠も悪くないが年相応、と言って感じで郁斗の頭一つ突き出たお洒落感には舌を巻いたものである
まぁ、今はお互いがっつりお洒落にハマり込んでいるのだが




