結成!!仲良し三人娘
「だとするならあのばあさん凄いな」
時刻は18時過ぎ、勉強会は無事終わり。絵梨はそのまま図書館で別れ、桃とは先程十字路で別れたところで悠は図書館であった出来事を郁斗に伝えた
「うん、凄い洞察力に優れている人なんだと思う。あそこまで他人の動向に気付けるのは完全に才能。真似なんかできない」
「世の中とんでもない人ってのはいるもんだな」
二人は素直に感嘆した。まさかたった一目で悠の化けの皮を剥がす人物がいるとは思ってもいなかった
桜仕込みの悠のカモフラージュは完璧に近い。言葉遣いは勿論、立ち振る舞いから細かい所作までまるで初めから女子だったかと見紛うほどだ
素を出せばまだまだ男くさいが、それを垣間見ることが無ければ悠は間違えようのない美少女だろうと郁斗は断言できる
親友ですら騙せるそれを一発で見破る眼力はやはり驚嘆の一言に尽きる
「でも珠代おばあさんは言いふらしたりはしないと思う。ただ嘘が許せないみたい」
「それだけ聞くとただの偏屈なばあさんなんだがなぁ」
初対面の人間にすら嘘を許さないその性格はかなり人を選り好みしそうだが、それさえなければ印象はガラッと変わる優しい人だったと話すと、郁斗は半信半疑と言った様子で返事を返す
確かに初対面のあの顔だけしか見ていないのだからすぐには納得できないだろうな、とクスクス笑いながら郁斗と話を続けていると、カツンっとつま先が地面に当たりグラリと悠は体勢を崩す
「きゃっ」
「おっと」
経験則からそのまま手を出して地面に倒れ込むのではなく腕を抱えるように縮こまって受け身を取ろうとした悠を郁斗は肩を掴んで引き戻すとそのまま胸に抱くようにキャッチした
「大丈夫か?やっぱり多いな、何もないのに転ぶの」
「ごめん、ありがと。相変わらず手足の長さが変わったせいで体幹とか諸々ズレてるからこればっかりは時間かかるなぁ」
どうにもこういった何もないところで転んでしまうと言うのは度々発生しており、大抵横にいる郁斗の対処も慣れたものだ
頻繁に、と言うほどじゃないが忘れた頃にやってくるのは直した方が良さそうだ
「んー、最近は忙しかったから道場行ってなかったんだけどそろそろ行こうかな。自分から改善した方が直り早そう」
「意識した方が確かに直りは早そうだな」
「体育も全然振るわなくてさ。この前なんてバレーで顔面トスしちゃって皆に笑われたよ」
手足の長さが変わったことで一歩の長さが変わったせいで無意識に動かそうとすると前の感覚で行ってしまうらしく、どうにも上手くいかないとの事で本来スポーツ万能な筈の悠にとってはこれは中々の屈辱だった
「あの男の件も考えればそろそろ環境に慣れるところから身体の感覚に慣れる頃にシフトすべきなんだよね」
「例の妙な薬を飲ませたってアイツか。悠を狙ったってことらしいけど警察とかには言ったのか?」
「一応言ったけど殆ど門前払い。確かに傷害事件起こすような奴が高校生一人を明確に狙って来てましたなんて言っても現実味は薄いよね」
警察、というモノは明確な証拠がないと動けないし動かない。行政なんて言うものはそんなものでましてや何でも屋や便利屋では無い以上、一介の高校生が何か言ったところで真摯に受け止める警官は恐らく一握りしかいないだろう
それにあの男の言葉が本当なら、その内現れるはずである。それならば出来るだけこの身体で腕を磨いていく必要性はある
「桜さんから反対されそうだな」
「今回ばかりは私の意見を押し通すよ。やぱれっぱなしな上に宣戦布告までされたんだ絶対に痛い目見せてやる」
ふんっ、鼻を鳴らす悠だったがまずは身体の感覚を戻さなくてはならないことを考えると中々に長い道のりになりそうな話だった




