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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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一か月の成果


「誘ってんのと変わんねぇぞ、それ。今やったこと想像してみろ」


「んー?あー、あー……」


自分がどういうことをやったのか、改めて悠が妄想してみるように言ってみるとあーうー、唸りながら段々と背中が丸くなっていく

終いには顔を覆い始めた、耳は真っ赤である


「さて、これが事情を知らない男の部屋でやったらどうなってた可能性があるだろうな?」


「し、知らん、知らん!!そ、それに郁斗相手なら大丈夫だろ!!」


また無自覚に恥ずかしい姿を晒していたと気付いた悠であるが、今回は強情に知らんぷりをかまし、挙句郁斗相手ならそう言った『間違い』は起きないだろうと豪語する


確かに郁斗は事情を知ってるからそういう感情は湧きにくいだろうし、悠にもまだ自覚が足りないのでそういう行為をするイメージが湧かないのだろうが


「ふぇ?」


トン、っと急に肩を押されて悠は郁斗のベッドに倒れる。押したのは勿論郁斗以外にあり得ない

何だ、と思うと同時に嫌な予感もついでにする。こういうことをする時の郁斗は自分に何かを分からせる時だ、割と強硬手段で


「俺も、一応男なんだが?」


「っ!?!?!」


頭の右側に郁斗の左手が身体を支えるために添えられ、眼前に大きく郁斗の顔が迫っている

所謂、押し倒された状態。ご丁寧に顎に手まで添えられた、校長室でもあったおでこにキスされた時と同じ動作だ


その見た目は更にすごいことになっているが


「俺だからって気を抜くな。俺だって男だ、分かるだろ?紛いなりにも女子のお前にそんな無防備な姿を晒され続けたら、こっちだって溜まるんだよ。分かるだろ?」


「おおおおおおおお前は男によくじゅおうするのか?!ホモかッ?!ホモなのか?!!」


「落ち着け、何言ってるか途中分からんかったぞ」


テンパる悠に眼前まで迫ったイケメン君はくっくっくっと息を殺して笑い、呂律も回っていないことを指摘する

しかし悠はそれどころではない、親友に押し倒されているこの状況が恥ずかしくて堪らない


しかも近い、超近い。若干この状況と言う奴を楽しんでいる節があるイケメン野郎のまつ毛の長さに気付いて感心してしまうくらいには長い。余裕あるなと思ったであろう、逆に余裕がないからこんな意味の分からない着目をするのである


「とにかく、俺が言いたいのは俺だから大丈夫、は止めとけ。他の男子の前でも同じこと絶対やるぞお前。ちゃんと女子としてのガードが固まるまで、俺に対しても気を抜くな。じゃないと――」


本気で食っちまうぞ、そう耳元で囁かれてもう悠はテンパるからパニックにシフトチェンジする。羞恥で思考が一切回らない


このイケメンは所作までイケメンなのだ。告白された回数は数知れず、その癖付き合ったことは一度もない、いや悠もそれなりにモテて同じようにすべて断って来たのだが。男としての甲斐性だとか、女子が喜ぶ動作を自然とやりやがるのがこの男である


しかも別に鈍感でも何でも無いと来た、なんだお前は


「や、や……」


よく分からない文句とこの現状の打破策にもならないよく分からない回想が頭の中を過ぎったような気がしなくもないがともかく悠は何か言わないといけないと思い、口を開く


「……優しくしてね?」


「兄貴―、ハル姉―飯の準備、出来た、って……」


パニくった結果出て来たのは現状の打破ではなくまさかの現状の受け入れの言葉で、その発言をした瞬間に元気よく郁斗の妹の郁香が部屋の扉を豪快に開けて登場する


その言葉も部屋の現状を見て、どんどんと尻すぼみになっていくのだが


「……お邪魔しましたー」


「……」


「……」


ギイィと音を立てて閉まるドアがやけに大きく聞こえた。悠と郁斗の二人は揃って耳まで赤くなっている


この状況を親に報告されたらどう説明しようとか、目の前のこのバカ幼馴染の発言でなんかもう色々ヤバいとか、恥ずかしい状況見られてもっと恥ずかしいとか、これ母親に報告されたらどうなるか想像もつかないとか


両者に浮かぶのはこんな事である。二人仲良くフリーズしていた


「……こうなることもあるらしいから気を付けような」


「もう、これどういう顔で下に行けばいいんだよ。郁香、絶対おばさんに何があったか言ってるじゃんかぁ……」


これから食卓で始まるであろう、楽しい家族会議に二人はどう言い訳すべきかを必死に考えるのであった

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