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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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一か月の成果

「酷い目にあった……」


「うぅ、ゴメンって……」


見事に青あざになったひりひりと痛む顎を擦りながら、郁斗と悠は既に夕暮れ時も過ぎて夜空が広がる下で帰路に着いていた


見事郁斗の顎を打ち抜いて意識を刈り取った悠はあの後慌てて保健室に駆け込み、帰る準備をしていた保険医の先生方を引き留め、郁斗を治療してもらい、目が覚めるまで

付添う羽目になっていた


その際、なんでこんなことになったか根掘り葉掘り聞かれて悠が真っ赤になってあうあう言っていたことを郁斗は知らない


「と言うか、郁斗があんなことすんのが悪いんじゃん」


「そうでもしないとお前丸め込まれてただろ。昔から信用できる奴の冗談が通用しねぇんだから」


顎に付いたガーゼを撫でながら嘆息すると悠はううぅ……と唸りながら真っ赤になっている

見てくれなら実に可愛いもんだがこれの中身は男である、それも踏まえればさっきの激烈な仕返しは納得いくもので、自分もあんなことをやられたら全力で蹴り飛ばすだろうな、と言う思いは郁斗が不利になるので黙っておく


「あーあ、もう19時だよ。どうすんだよこれ、多分俺飯抜き確定だな」


間家は事前に遅れる等の連絡を入れておかないとその人の晩飯は抜かれる

台所の長である郁斗の母がそう言った家庭の食事事情にこだわりがあるようで、家族団欒を乱すような輩には飯などやらんという事らしい


分かるような分からないような何とも言い難い持論であるが、そのために今日の郁斗の飯は恐らく抜きだろう

喰い盛りの男子高校生にこれは辛い


「わ、私も事情を話すから多分許してもらえるよ。それともウチで食べる?」


「あー、厄介になるのはあれだしウチに来て事情だけ説明してくれ。俺が言うよりは信用してもらえるだろう」


悠自身も門限を過ぎているのだがこっちは既に桜に事情を連絡済みで怒られる心配はない


どっちも非はあるのだが、気絶させるほどの一発をお見舞いしてしまった悠の方がやはり罪悪感があるようで率先して郁斗にこれから降りかかるであろう不幸を取り除いてやろうと提案してみる


普段から厄介になっている郁斗としては突然夕飯をいただくわけにも流石に行かず、無難に郁斗の代わりに事情の説明をすることになった


そのことで根掘り葉掘り聞かれたら恥ずかしい目に合うのは悠だとは本人はまだ気が付いていない








「あらやだもう!!可愛くなっちゃって!!そういう事なら今回は悠ちゃんに免じて許してあげる。悠ちゃんにもご馳走するわね、今日は我が家特製のカレーよ!!」


「むきゅ?!あ、ありがとうございます……」


結局根掘り葉掘り聞かれて何度目かの赤面をする羽目になった悠は諸々の事情も知っている郁斗の母、郁代(イクヨ)に熱烈なハグを受けていた


お向かいさんで悠と郁斗は幼馴染で、今の悠の秘密を知っている間柄

この関係で間家の面々を騙し抜ける自信は悠たちを始め、高嶺家一同も全く自信がなく、先の一か月の間に諸々の事情は説明済みである


最初は当然訝しがられたが、悠や郁斗の様子や間柄、実際に起こった映像を郁斗自身から見せられたことで間家の面々も了解を得て、今後なにかトラブルがあった時は一緒に対応してもらえることになっている


「なに兄貴、ハル姉連れ込んでナニすんの?」


「テメェは何言ってんだ」


ハグされて身動きが取れなくなっている悠の後ろでは既に靴を脱いで階段を昇っている郁斗とその妹、郁香(イクカ)がケラケラと笑いながら兄をからかっている


中学三年生の彼女も当然、(ハルカ)(ユウ)だと知っていて、かつては悠兄ちゃんと慕っていたが今では呼び方を変えて(ハルカ)から取ってハル姉と呼んでいる

郁斗もそうだが、色々と気配りが出来、臨機応変に対応できるよく出来た子と言うのは悠の評価である

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