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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
秋めく日々は初恋の季節
205/206

ラブ&ピンチ

女のバトルに郁斗が震えあがっている最中、その対戦カードである悠と須藤美々の戦いは更に苛烈さを極めていた。


「そもそも貴女、郁斗君の彼女でも何でも無いんでしょう?彼女面を勝手にされて、彼も迷惑してるんじゃない?」


「勝手に教室まで押しかけて来る人の方が明らかに迷惑です。と言うか、先輩振られてますよね?負け犬が敗北を認められなくて、必死にアピールしようとしてるの滑稽なんですけど」


「勝負すらしてない貴女に何が言えるのかしら?」


「勝負にもなってないって言ってるんですよ」


売り言葉に買い言葉。文句と嫌味の応酬である。

割と最初からではあるが、相手に対する不快感を隠そうともしない両者は一歩も譲らない。


犬猿の仲、相いれない存在とは二人の事を指すのかも知れない。言葉の応酬が更にヒートアップしていく中、須藤美々はそれならばと、手にぶら下げていた大きなお弁当をその場で開いて見せる。


「野蛮な貴女にここまで料理は出来て?見た目からして花よ蝶よと愛でられて育ってそうだから、家事の一つも出来なさそうだけど」


彼女が出したのは恐らく、郁斗のためにと作って来た弁当だろう。男性サイズのそれには郁斗が好きなサッカーのボール柄と、ユニフォームと思わしきデザインにカットされた海苔などがご飯の上に乗せてある、所謂キャラ弁やデコ弁と言われる物だった。


おかずはオーソドックスに卵焼き、ウィンナー、ポテトサラダ、ミニトマトなど。見栄えも彩りも確かにレベルの高い弁当で、彼女が家事を少なくとも一定ラインは熟せることを表している。


ただし、その弁当を悠は鼻で笑って見せる。


「男子相手にキャラ弁?確かに可愛くて、女子にはマウント取れるけど、男の子にはウケ悪いですよそれ」


「んなっ」


そう、残念ながらキャラ弁と言うのは確かに見栄えも良く、彩も良く見え。クオリティが高ければ高いほど、料理上手の証明みたいなものなので女子に対しては周囲への威嚇になったりするのだが、実は意外と男子ウケは良くない。


何せ、蓋を開ければ飛び出てくるのは気合の入った可愛らしいお弁当である。確かに嬉しい、嬉しいのだが。これを誰かに見られて囃し立てられるとなると、思春期男子の男子の中には、こっぱずかしくて食べられない、なんて子が出かねない。


成人男性でも、それはあまり変わらない。中には料理出来るでしょアピールをガンガン押されて萎えてしまう人までいるらしいと言うから、案外男心というのも難しい物なのだ。


「それを回りに囃される男子の気持ちも考えてあげたらどうです?男の子はプライドの高い生き物です。女子が思ってるよりずーっとナイーブな生き物なんですよ。それと、もう一つ」


そう言って悠は一品ずつ、品物を数えていく。ついでにカロリーまで上げていくのは分かりやすいマウント行為。苛烈なマウントの取り合いは女子のケンカならではだ。


ご飯に大凡二膳分、約500kcal。ウィンナー4本、同じく約500kcal。卵焼きふた切れ、約90kcal。ポテトサラダ少量、多くても約100kcal。ミニトマト2つ、10kcal。


合計約1200kcal。そう読み上げた悠は不敵にニッと口角を上げる。


「確かに一般的な男子生徒には十分な食事量ね。でもね、郁斗は将来アスリートを目指してる男子よ。今は怪我をして、一線を退いてるけど、今もトレーニングは欠かしていないし、調子も右肩上がり。いずれ部活にも復帰する。それなのに、その食事量?ハッキリ言うわ、全く足りてないわね」


男子高校生に必要な一日のカロリー総数は約3000。それを3回の食事量で単純に割ると一回の食事で、大体1000kcalは摂取する必要がある。


ただし、これはあくまで普通の男子高校生。あるいは文系の部活に所属する男子高校生に必要な量だ。水泳、野球、陸上、バドミントンやテニス、バスケットボールなど、ハードな運動を熟す場合、そのカロリー量では全く足りない。郁斗が目指すサッカーも、常にコート内を走り続けるハードなスポーツだ。


そのハードなスポーツをすることで消費するカロリー量は勿論変動はするだろうが、余裕で1000kcalを超える。時には2000kcal近いエネルギーを消費するわけだ。

普通に生活しているだけで3000kcalを消費するのに、それにプラスして2000kcalほどのエネルギー量が必要。


つまり運動系の部活動に本気で励む男の子には一日5000kcalものエネルギーをぶち込まないとあっという間にガス欠になってしまうのである。

部活動男子が常に腹ペコなのはこういうことなのだ。


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