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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
秋めく日々は初恋の季節
204/206

ラブ&ピンチ

翌日の昼休み。本来ならクラスメイト達の賑やかな声に交じって、悠達も相応に喋りながら昼食を取っているこの時間帯。


なのだが、今日に限っては誰かがつばを飲む音すら聞こえてきそうなくらい静まり返っていた。


「上級生が下級生のクラスに何の用ですか?みんなが遠慮してしまうんでせめて廊下にいるべきだと思うんですけど」


「あら、別に気にするほどの事でもないでしょう?たかだか一年しか違わない相手だもの。それに私が用事があるのは郁斗君だけだから、気にしないで頂戴」


それもそのはず。何せ教室のど真ん中で珍しく、明確なまでの不機嫌オーラ全開にしている悠と、何故か上級生であるはずの須藤美々が当たり前のような顔をして悠と正面切っての口撃バトルをしているのだから。


「個人に用があるならそれこそづけづけと入ってこないでください。迷惑です」


「学校の他クラスに入るくらいなんてことないでしょう?」


「礼節って知ってます?同学年ならともかく、他の学年の教室に挨拶も無しに入って来るなんて、ちょっとデリカシーが欠けてるんじゃないですか?」


たかだか一年言えど、上級生は上級生。年長者が敬われる傾向の強い日本では、一年とは言え年上ならそれは格上の人間。

そうした人物が、年下のテリトリーに無闇矢鱈と踏み込む行為は彼らを委縮させ縄張りを荒らしているのと変わらない。


少なくとも、日本の学校と言うのは大きく学年でテリトリーが分けられ、そこから更にクラスでテリトリーが分けられている。

そのクラス特有の雰囲気はどのクラスもある。学年が違えばそれはもっと顕著になるのだ。


それを無遠慮な形で踏み荒らしている須藤美々は、悠の言う通り、少々デリカシーや配慮に欠ける行為と思えた。


「縄張り主張の激しい番犬みたいなこと言うのね、貴女」


「論点ずらさないでもらえます?野良犬さん」


特にこの高嶺悠と須藤美々と言う二人は、恐らく根本的に相性が最悪なのだろう。


自分を律し、ルールや規則、マナーは原則として守るべし、という考えなのが悠だ。

頭が固いともとれるが、周りとの協調や共存に重きを置いており、自分だけでなく、周囲の人にも配慮をするタイプと言える。


対して須藤美々は個人主義に近いタイプで、自分の望んだ結果にならないと面白くないし、ルールや規則よりも、個人の考えをハッキリ主張する方が正しいと考える。

嫌だと思ったら何が何でも嫌だし、やると決めたら周りの事など捨て置いて物事を進めていく。協調性よりも確実性や実行力の強さに注力しているだろう。


共通しているのは、基本的にどちらも頑固、と言うことだ。


多数決等の場合は、悠の場合引くだろうが、個人対個人となった場合は自分の主義主張は早々に変えることは無いだろう。

2人とも、そこが自身の根幹を支える芯になのだ。


それがぶつかると、目に見える程のバチバチとした対抗心がむき出しになる。

それが、今のこの教室の状態だった。


「……郁斗、アンタ昨日何したのよ」


「場合によっては二人の仲裁に入ってもらいますからね」


そのバトルの中心地にいる絵梨、桃、郁斗はその圧のお陰で美味しいはずの昼食が喉を通らないか味がしない始末。


大凡、事の発端は郁斗だろうと目星をつけた絵梨と桃が郁斗を糾弾するが、郁斗からしてもどうすれば良いんだと頭を抱える事態だった。


「……昨日しつこく告られて、どうにか断ろうとしたら、悠が横から俺を掻っ攫って行った」


「かんっぜんに女のバトルじゃない。どうすんのよコレ」


「逆に郁斗さんが出て行ったら話がこじれるので絶対に出て行かないでください」


「ワカリマシタ」


女子二人に思いっきり釘を刺された郁斗が一番小さくなっているのが、あまりにもシュール過ぎる光景なのだが、隣で勃発している美少女バトルの結末の方があまりにも気になり過ぎるので、クラスメイト達に見られていないのが、せめてものの幸い。なのだろうか。


とにもかくにも、一波乱起きているのは明らかだった。


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