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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
20/206

一か月の成果

「いらっしゃいませ~」


自動ドアを潜ると女性店員の間延びした声が聞こえる

店内はごくごく普通のコンビニで特に何があるというわけではない


しいて言えば住宅街+高校が近くにあるということで日用品や雑貨類、菓子類が他のコンビニと比べると豊富に揃っている


「で?シュークリームで良かったか?」


「紅茶もよろしくー」


「何時になくガメついて来やがったな」


「お?まだ母さんにバラしてないあれやこれがあるけど?」


「くっ……」


シュークリームで良かったか、と言葉そのままの意味で確認した郁斗だったがそれプラスにペットボトルの紅茶も要求される


抗議しようにも悠が学校に来ずに女子としての嗜みを身に着けている1か月間の内に二人は何度かのハプニングをやらかしていたりする

大半は桜に見つかりその場で折檻されていたが、幾つかはまだ桜にはバレていない


悠はそれを脅しに郁斗に追加要求を押し通す。それを言われると強く出れない郁斗は口では悪態を付きつつも表情や声音は特に気にした様子もない、精々苦笑いと言った程度


「ホントに、二人は仲が良いんですね」


「そりゃ、幼馴染だし」


「ガキの頃からの付き合いにもなると多少の冗談なんて慣れたもんさ」


コンビニで三人分のシュークリームと飲み物を購入した三人が外に出たところで桃が改めて二人を見て思ったことを口にした


二人は嘘だが、嘘ではない限りなく真実な嘘で答える

確かに昔から行動を共にする幼馴染だが、それはあくまで(ユウ)と郁斗の関係であって、(ハルカ)と郁斗の関係ではない


嘘とは真実を織り交ぜながらすることでその真相を暴くことが難しくなる

度々馬鹿をやって大人たちのお説教から逃れて来るために二人が自然と身に着けたスキルであった


「なんか、間君と高嶺君が一緒にいるみたいに見えますね」


二人揃って、口に含んでいた紅茶を噴出した


「ゴホッ、ゴホッ」


「ちょっと、大丈夫?私も桃ちゃんが変なこと言うからびっくりして噴出しちゃったけどさ」


気管に入ったらしい郁斗の背中をトントンと強めに叩きながら、悠は噴出した適当な言い訳をする

全く知らない人からすれば(ユウ)(ハルカ)は同じ漢字を使っていて、親戚同士だと言ってもあくまで別人である


それをまるで同じ人といるみたいだと言うのは変なことと十分言えるだろう

あくまで自分と悠は別人である、言外にそういう意味を含ませながらちょっと声を張ってわざとらしくならないように、桃に聞こえるように言う


「す、すみません、変なこと言っちゃいましたね。大丈夫ですか?間君?」


「ゲホッ、ゲホッ、あーいや、勝手にむせたのは俺だし気にしないで。まさか悠に似てるなんて言われるとは思ってもいなくてな、なんか知らんがびっくりして噴出しちまった」


咳込んでいたのがようやく収まった郁斗も無難な回答で話を流す


二人とも、よもや登校初日にそっくりだと言われるとは思いもしなかった上に授業自体は終わり、帰り道である

完全に気が抜けていた時に来た予期せぬ攻撃だったので二人揃って動揺してしまったのは痛手だが、桃は気にしてはいないようだった


「シュークリームちょうだい」


「ほらよ」


話題が途切れたところで悠は遥斗が持っているシュークリームを要求する

ここら辺でどうにか話を変えとかないとまた踏み込まれた話をされそだから甘味の話に変えてしまおうという魂胆だ


その意図を察したかは不明だが、郁斗は持っていたビニール袋からシュークリームを一つ取り出すと放り投げる

危なげなくキャッチした悠はその場で袋を開けて一口噛り付いた


「歩きながらシュークリームって喰いにくくないか?」


「いへふいへふ」


「口の中からにしてから言え」


もぐもぐと咀嚼しながら答える悠に頭を抱えながら、郁斗は桃にシュークリームを手渡す

因みに悠には放り投げたのはこいつなら放り投げてもキャッチ出来るという信頼に似た別の何かかから来ている


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