ラブ&ピンチ
学校の授業は基本的に学生からしたら退屈だ。悠達からしてもそれは特に変わりなく、めんどくさいなぁ、眠いなぁと頭の中でぼんやりと浮かべながら、せめてノートくらいはと言う義務感で黒板に書かれたことだけは書き写す作業がしばらく続いた。
「だぁーっ、終わった終わった~」
ググっと身体をほぐしながら伸びをする絵梨を筆頭に、帰りのSHRを終え、クラスメイト達は各々の予定に合わせて散っていった。
部活に忙しい者は部活動に、家に帰りたい者は足早に教室を去り、友人と親交を深める者は友人とお喋りをしながらのんびりと教室を出て行く。
普段なら、悠達はさっさと帰って修練に励みたいので、足早に教室を去る部類に入るのだが、今朝の事もあり、中々そうも行かなかった。
「さて、とりあえず断って回るしか無いか」
「うーん、直前になってめんどくさくなって来た」
2人の手に握られているのは、休み時間に一応目を通したラブレター達。大体は日時と場所を指定してあり、返事が欲しい人ほど、明確にそれが示してある。
中にはうっかりなのか、ただ想いを伝えるだけに精一杯だったのか、日時や場所の指定が抜けている物もあるのだが、それに関して書類不備と言うことで、そのままボッシュートと相成った。
特に日時と場所の指定も無ければ、名前やクラスの記載の無い物はもうどうしようも無い。
お前は誰だよ状態だ。そんなのも一定数ある上に量も豊富とあっては記入不備のあるものには一々構っていられない。
2人だって、暇じゃないのだ。最悪、この事態が長く続くようなら、下駄箱に投函禁止の張り紙でも張るしかない。
「分かってると思うが、変な事されたら躊躇わずにぶん殴れよ。死なない程度に」
「郁斗こそ、変な振り方して刺されないようにね」
悠も郁斗も、お互い忠告をし合って別れると、まずはと指定されたクラスや場所に足を向けるのだった。
「なんでこいつ等そんな物騒なこと言ってんのよ」
「まぁ、恋愛ごとのトラブルは怖いですからね……」
「てか、私達どうする?帰る?」
「うーん、どうしましょうか。長くなりそうですもんね」
残された二人、絵梨と桃はこっちはこっちでどうしようかと頭を悩ませるのだった。
結果として、待ちくたびれて帰ることになったのは言うまでもない。
それぞれきちんと場所や日時が指定されたラブレターに対応していた中、今日を指定日にしていた物の最後の一枚。
その相手を目の前にして、郁斗は頭を悩ませていた。
「なんで付き合えないのか、理由をしっかりと説明して欲しいと言っているんです」
呼び出されたのは学年が一つ上の三年生のクラス。その教室の一角で、郁斗は気分としてはまるで尋問を受けているような感覚をだった。
「いや、だから付き合う気が無いからこうしてお断りに来たんじゃないですか。それ以上も以下も無いですって」
「その付き合う気が無い理由を明確にしてもらわないと納得できません。幼馴染の高嶺 悠とは実は付き合っていないと言うのは噂で聞いてますし、そうなれば貴方はフリーと言うことですよね?私と付き合うのに何の問題があるんですか?」
付き合えない、と断った郁斗に食って掛かってきているのは、三年生の須藤 美々(スドウ ミミ)と言う生徒だ。
艶やかな黒髪を背中の中ほどまで伸ばした髪と男子ウケのするメリハリの張る体つきは割と悠と似ている。身長も然程変わらないだろう。
強いていうのであれば、運動が得意で日々修練に励んでいる悠の方が脚線美に優れていて、彼女の方が全体的にむっちりとしたより女性的な肉感に優れた体型と言う感じか。
とは言うものの2人を並べるとようやくわかる差、程度なのでそこまで明確な違いがある訳でも無い。
「いや、問題云々じゃなくて、そもそもその気が無いんですって」
「理由になってません。私と付き合える状況にあるのに、付き合わない理由を明確にしてほしいと私は言っているのです」
一番の違いはそのきつめの目つきと性格だ。須藤美々はかなり言動の当たりが強い。角の立つ言い方と言うか、納得できないことには納得できないと真正面からケンカを売りに行くタイプのようだ。
目つきも釣り目の方で、かなり勝気な印象を受ける。
不満があったらケンカ上等と言った具合で、見た目印象からして柔和で普段は無駄な衝突を避けるタイプの悠とは、真逆のタイプの人間。それが須藤美々という女子生徒だ。
更新のご催促をいくつかいただきまして、勇クビと入れ替えの隔日更新と言う感じで今後更新していくことに決定しました。
可能な限り、というお約束になりますが頑張ります(震え
何回目の言い訳だこれ




