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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
秋めく日々は初恋の季節
198/206

ラブ&ピンチ

そもそも、どうして急にこんなにも大量のラブレターが送られてきたのか、頭を悩ませるのはその部分も大きい。

ラブレターの返事自体は一つ一つしっかり返せば良いが、こうも多いと色々と差し障るし、正直に言うと、対象である二人にとっては迷惑なものだ。


2人とも、恋愛に元々それほど興味が無い。同じ年頃の少年少女たちが恋愛に向ける情熱を、それぞれ剣術を極めることと、サッカーを突き詰めることにつぎ込んで来たからだ。


2人にとって、生涯の恋人は剣とボールなのである。それ以外はほとんど目を向けていないし、目を向けるつもりも無かった。


今はそれぞれ、少し別の事に向ける心的余裕を持つようになったが、それでも恋愛に率先してのめり込もうとすることは無い。


悠はそもそも女子としての恋愛なんて頭から考えていないし、郁斗は意図して無視を決め込んでる節があるのは、本人の自覚があるところ。


「うーん、なんで突然……。やっぱり昨日の告白が原因?」


「おっはろー。なになに、朝からどったのってうわなにそれ、全部ラブレター?」


悩む悠の後ろからのしかかるように挨拶をして来たのはクラスメイトの一人、七瀬 美佐希。所謂不良系グループに所属する彼女は分かりやすく言うとギャルだ。


制服を着崩し、校則違反上等と言わんばかりに髪を染めて、化粧も目元を中心にしっかり施している。

昔いたらしいゴテゴテの化粧をしたギャルではなく、ナチュラルメイクに近いそれだが、基本的に化粧をしている女子はいない笠山高校の生徒の中では人一倍派手な生徒の一人である。


「あ~、そう言えば知り合いの男子達が喋ってたわ。はるっちがもしかしたらフリーかも知れないって。バッチリ間っちと予約済みなのにバカだよねぇ~~」


「よ、予約済みじゃないって……!!」


「またまた~」


茶化す七瀬を顔を赤くしながら悠が否定するも、七瀬はにんまりとした笑顔でうりうりと悠の頬を人差し指で押しながらからかう。


郁斗は我関せず、桃も笑っているだけ、絵梨は呆れているだけだ。郁斗からすれば、まだ悠が女子になったばかりの頃の付き合っているフリを継続していた方が色々楽であるし、桃も絵梨も普段のあれこれを見ていれば特に否定する要素も無いとの判断だった。


「てか、男子にそんな噂広まってるの?」


「ウチも小耳に挟んだ程度だけどね。ワンチャンあるかも、とか言ってたかな。大体の男子は間っちに勝てる気がしないって言ってたけどね~。実際、ウチの学校にこれ以上のイケメンいないっしょ」


ともすれば、その噂とやらが今回の大量のラブレターの原因だろうか。それに誘発される形で、郁斗の側にもラブレターが流れ込んできた可能性は、考えられなくもない。

恐らく、2人を知る生徒の殆どが悠がフリーとなれば、その片割れと思われていた郁斗もフリーだと考えるはず。


流れとしては、それほど不自然なものでもない。


「実際、夏休み中にスカウトされたしね」


「マジ?やっぱイケメンは違うわ~」


「柏木も小高も悠も、まとめてだけどな」


「はぁ~、まぁ全員美男美女に美少女だもんね。納得出来るわ」


七瀬の言う通り、この4人の顔面偏差値は中々に高い。


クール系イケメンの代名詞のようなルックスと性格をしている郁斗に、見てくれだけならお嬢様然とした容姿で男子ウケの良いメリハリのある体型の悠。


小柄ながらも可愛らしく、庇護欲をそそる桃。スラリとしたモデル体型で、綺麗系の顔立ちをしている絵梨と、全員が全員異性同性問わずそれなりの視線を集めるような容姿をしているのは確かな事実だ。

それは、以前水着を買う時にスカウトされたことからも窺える。


「そんなことよりもこのラブレターだよー。どうすれば良いと思う?」


「捨てちゃえば?はるっちは興味ないっしょ?」


「うーん、逆恨みされそうで」


「そん時は間っちボディガードで良いじゃん?そもそもはるっちならボコせるじゃん?」


「いや、まぁ、そうなんだけど」


「おらー、席つけー。ホームルームだぞー」


取り扱いに悩ましい。悶々としながら大量のラブレターの扱いを考えているうちに1通もその中身を見ることは無く、朝のSHLの時間になるのだった。


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