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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
秋めく日々は初恋の季節
193/206

夏休みが明けまして

悠が絵梨と桃の下に戻ると、絵梨は暑くて怠そうな表情のまま手を上げて応え、桃はお疲れ様と一声かけて悠を労った


「隣の組の子に捕まってたけど、どうかしたの?」


「部活の勧誘。バレーやらないか、だって」


「悠ちゃん、部活動入ってないですもんね」


先程のやり取りを遠目から見ていたようで、二人が問いかけるもその内容自体は大したことが無いので、その話を聞いて成る程と二人は納得する


悠の家の事情を知らなければ、運動部からすれば喉から手が出る程欲しい人材だろう。先程の女子生徒が言ったように、勿体無いと言えるだけのスペックを悠は有している


「絵梨も試合に出たら声かけられるんじゃない?」


「いやいや、私も夏休み中に結構鍛えたけど、悠にはてんで及ばないって。それに、やってる暇もお金も無いよ」


絵梨の方も、アジア人女子としては中々に高い175cmと言う身長はそれだけで武器になる。スポーツにおいて、体格の良さと言うのは何事にも代えがたい、圧倒的なステータスだ


それに加えて、絵梨自体の運動神経は決して悪くないし、今は香達から直々に指導を受けているので、その身体能力はぐんぐんと伸びている

それを見越した声かけは充分にあり得そうな話だった


「絵梨ちゃん、夏休み中にスポーツ始めたんですか?」


「んー、スポーツというか格闘技?今、私の親代わり候補の人が教えてくれてるんだ」


「そうなんだ。いいなぁ、私スポーツは全然だから」


「桃ちゃん、50m走ですらへろへろになるもんね」


だからと言って、部活に参加する時間的余裕も、金銭的余裕も絵梨には無い。いや、金銭的余裕なら香に言えばどうにかしそうなものだが、流石にそこまでしてもらうのは絵梨には気が引けた。一応、毎月のお小遣いはもらったいるのだが、それすら少し気が引ける話なのはやはりまだ出会って日が浅い証拠でもある


「そういえば、その親代わりの人ってこの前会った香さん達のこと?」


「そうだよ」


「じゃあ安心だね。優しいもん、香さんも照さんも」


「それ聞いたら、香さんはともかく、照さんは『お主、何を言ってるんじゃ?』とか言いそうだわ」


「ありそ~。照さん天邪鬼だしね」


あはははと笑いながら、三人娘は話に盛り上がる。七夕祭りで出会った香と照が親代わりと聞いて、桃が一人でに寄せていた心配は解消されたようだ


絵梨もその話で笑っていられる辺り、二人にはそれなりの信頼を寄せているのだろう。後は時間が解決する話であった


「そうだ、悠は郁斗と結局チューしたの?」


「あ、それ私も気になります」


そんな少々デリケートな話題から一転、こちらも一応デリケートな分野の話ではあるのだが、まだ弄り易い悠と郁斗について矛先がクルリと変わる


「うぇっ?!いや、えっと、その……」


急にその話題に触れられた悠は右往左往しながら、答えを考えるがどうにも言葉が出てこない。したと言えば、した。だがあれは事故のような物で、それを認めて良いものか分からない

それに、変に答えて郁斗を困らせてしまうのも憚られ、どうしたものかとわたわたわたわたと手をあちこちに動かしながら、どうにか返事をしようと頭を回す


「んんー?分かった、恥ずかしいなら耳元でいいから、内緒で教えて」


「そうですよ。誰にも教えませんから」


イエスかノーで答えるだけの質問に、答えられない悠を訝しんだ絵梨と桃は妥協案として内緒話として、小さな声で喋って欲しいと提案する


ハッキリ言って口を割らせる甘言も良いところだが、律儀な悠はそれに応じて耳元でコソコソとあの時、びっくりして跳ね上がった拍子に郁斗の唇に触れてしまったことを話した


「あー、成る程ね。事故みたいなものだし、確かにカウントに悩むわ」


「自分の意思では無いですもんね。というか、悠ちゃんは何で郁斗君とキスしたいんです?」


「えっ、いや、別にキスしたいわけじゃなくて、その、何というか……」


それを聞いてなるほどー、と納得する二人は更に踏み込んだ話題に触れる。そもそも何で郁斗とキスをするという発言に至ったのかだ

その場の勢いで言ってしまったのもあるだろうが、それでも何か理由が無いとそういう話にはならないのだから今の冷静な悠なら、何か答えが導き出せそうだった


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