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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
秋めく日々は初恋の季節
191/206

夏休みが明けまして

翌日、二人の微妙な空気は改善されぬまま、二学期が始まって二日目の学校生活が始まる


二人一緒の登校は変わらず、とは言えいつもならもっと近い筈の距離感が微妙に開いていることは、一部の察しが良いクラスメイトや、その手の話に鼻が利くクラスメイト達には見事に看破されていた


「ねぇねぇ、絵梨。あの後二人はどうだったのよ」


「どうって、まぁ見ての通りよ。皆で囃し立てちゃったせいで悠の方が変に緊張しちゃって、挙句は間のとこから逃げ出す始末よ」


二日目から通常のスケジュールに戻った授業はお昼前の体育の授業。女子はカーテンを閉め切って教室で、男子は廊下で半袖ハーパンの体操着姿へと着替えている最中。共学の学校では、よく見る光景だろう


その教室の一角、いそいそと着替えていた絵梨の元にクラスの女子生徒一人がひそひそと話しかけて来た

その生徒はクラスの中でも恋バナ好きな一人で、どちらかと言うと自分よりも他人の恋バナで盛り上がるタイプの人間だ


今回も目ざとく悠の変化をかぎ取ったようで、まずは本人よりもいつも一緒にいる絵梨や桃から話を聞くことにしたらしい


「あちゃー、あの場のテンションでノっちゃったけど、やっぱそうなってる感じ?」


「間は間で調子狂ってるみたいでギクシャクしてるし、おかげでこっちも調子狂うわ」


「あーねー、二人揃ってあそこまで純情だとは思わなかったわ」


「でもさ、どっちかっていうと純情無垢なのは悠ちゃんの方で、間君の方は悠ちゃんがちゃんと受け入れられるようになるまで、待ってあげてる感じじゃない?」


「えー、そこは男らしくガツンとさー」


「そりゃ、ある程度男に耐性あるなら良いかもだけど、明らかに恋愛初心者な悠ちゃんにそれやったら、びっくりして逃げ出しちゃうでしょ」


「今回がいい例だよね。私らやり過ぎちゃったし、話聞いてあげたりとかさ、アフターケアしてあげないと」


「そうそう、二人ともかわいそうだし」


「あー、でも良いなぁ。間君イケメンだし、あんな彼氏と皆に祝われる恋愛したいわぁ」


「そりゃあの二人だから出来るんでしょ。容姿端麗で性格良し、誰が見ても仲睦まじくて、嫌味っぽくも無いとか、一般人じゃ無理無理」


「だよねー」


そんな話をしていたら、あれよあれよという間に周りの女子生徒たちも話に混ざり出して随分と姦しくお喋りをすることになってしまった


これぞ女子の習性の一つと言えるだろう、食いつける話題が有ったらあっという間に広がって、話が脱線していくのは誰も気にもしない既定路線と言うやつだ


そんなクラスメイト達に呆れながらも、悠の事となればグループの垣根を超えてまで協力してあげようという話もちらほらと出るのは、悠の人柄の良さがにじみ出ているところだろう


「……?」


そんな悠に絵梨がチラリと視線を向けると、丁度着替え終わって、体育用に長い髪をヘアゴムで纏めているところだった

たまたまパチリと目が合うと、どうしかした?と小首を傾げてこちらを見つめ返してくる


これが元男子だというのだから、世の中どういうものか分からないものである。どう見たって女子のそれである

まぁ、ひと月の間にこれでもかとスパルタ指導されたと遠い目で話す悠を見ているのでその成果なのは疑いようも無いが


「何話してるの?うひゃぁっ?!」


そんなこんなで見つめ合ってると、用意の終わった悠が絵梨の元に直接やって来たためあっという間に悠は周囲の女子達にもみくちゃにされることになる


仲が良いのは大変よろしいことなのだが、あまりのんびりしているとそろそろ授業に間に合わなくなるのだが


「絵梨―、桃ちゃーん!!たすけてー!!」


「私達が悪者みたいな言い方は辞めなさいよ」


「頬っぺたもちもちすべすべ羨ましいなぁ」


「へりー、おもひゃーん」


頬をこねくり回されている悠に笑いながら、絵梨もその輪の中に突撃していく。桃の方は困ったように笑いながら遠目で傍観。この辺りは個人の性格がよく出ているところだろう


その後、結局体育は仲良く遅刻した


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