夏休みが明けまして
ポカンとするクラスメイト達と同じくポカンとする唯一の大人たる牧ちゃん。そして悠のトンデモ発言の矛先になった郁斗も含め、全員がその大絶叫の無いように固まった
動いているのは、大きく息をしている悠だけだ。その悠も目をつぶって大絶叫したまま目を開けていないため、教室の状況は全く把握できていない
「「「「「「うおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっ!!!!!!!!」」」」」」
あれ、なんか妙に静かだぞ?なんて思った時には、静かだった教室は一転、クラスメイト達の雄叫びに埋め尽くされた
「郁斗様ご指名はいりましたぁー!!よっ!!!!」
「ほら悠ちゃん!!真ん中行って行って?!」
「おいっ、バカ?!お前らなぁ!?」
「えっ?!えっ?!」
ひゅーひゅーと囃し立てる声に囲まれながら、悠と郁斗はあっという間に教室の真ん中まで背中を押されて向い合せに立たされる
それを囲う様に、クラスメイト達がまじまじと二人の様子を今か今かと観察している
「ほらほら!!悠ちゃんが言ったんだよ!!ここは豪快にぶちゅーっと!!」
「間―!!お姫様からご指名だぞ!!まさか女子にリードされるなんてのはねぇよなぁっ?!」
「はい、キース!!キース!!」
囃し立てる声はドンドンとヒートアップしていき、二人を追い立てる様に声を大きくして行く
おどおどとする悠に、困ったようにうなじを触る郁斗だったが、やがて雰囲気に呑まれたのかゴクリと喉を鳴らしてお互い見つめ合う
おぉ~っ?!っとクラスメイトが盛り上がる中、少しずつ二人の距離が縮まって行く
あと少し、もうちょっと、まさに唇と唇が触れ合う
「こらぁっ!!うるさいぞお前らァッ!!」
その瞬間、教室のドアをピシャンッ!!と大きな音を立てさせて、学年主任の男性教諭による雷が、悠達のクラスに落ちた
その場にいた全員の肩がビクッ!!と揺れて、完全に想定外の学年主任の登場にクモの子を散らしたように全員がバタバタと席に座る
「いくら時間が余りがちとは言え騒ぎ過ぎだぞ!!他のクラスも、学年も、このクラス程騒いでいないからな!!お前たちだけだぞ、外まで聞こえるような大声で騒いでるクラスは!!」
お怒りの学年主任の声に全員がビクビクしながら、これ以上刺激しない様に全員がひたすらに黙る。教師の牧ちゃんに至っては存在を消す勢いで、自分はここにいませんよモードである
「全く、次は時間まで静かに喋る様に。後、牧田先生は後で私と教頭のところに来るように」
「アッ、ハイ」
牧ちゃん先生、ステルス失敗である
そんなお説教が確定し、灰になる牧ちゃんを他所に、リセットされた教室の雰囲気はさわさわと喋る程度の大人しいものに戻る
(あ、当たっちゃったけど、事故だからノーカン、だよね……!!)
(なんか柔らかいのが当たった気がするが気のせいだ気のせい。何も無かった無かった)
騒ぎの中心にいた当事者二人だけが、かつてないほどに早く鼓動する心臓と、妙に熱い顔を周囲に悟らせぬように誤魔化しながら、二人の間に何が起こっていたのかをそっと胸の内にしまい込んだのだった
その後、特に問題なく予定していた時間になるまで大人しくしていた悠達のクラスは、解散し、とぼとぼと重い足取りで職員室に向かう牧ちゃん以外は実に軽い足取りで帰宅していく生徒たち
悠達もその例に漏れず、いつも通りに下校するはず、だったのだが
「……」
「……」
悠と郁斗、いつもはべったりだった二人の距離が何だかいつもよりも気持ち、ちょっとだけ余所余所しく開いているようで、またいつもなら何か話をしている二人が、これまた余所余所しく無言で歩いているのは、二人の仲の良さをしている面々からすれば、何とも珍妙な光景だった
「どしたの、あれ」
「多分、さっきのが尾を引いてるんだと思います」
「あー」
ひそひそと少し離れて話す桃と絵梨が、二人に何が起こっているのかを察するが、面白そうなので放置することにした
こんな光景、次は何時見れるか分からない
2019/3/7 時点で総合評価1200を超えました。ブクマも500に到達しそうで感謝感謝です
いや、ホントこんな作者の性癖と欲望と願望を詰め込んだ小説モドキを500人近くの方に読んでいただけるとは、正直予想を大きく超えているので、大変嬉しいです
今後とも、拙作をよろしくお願いいたします
あ、あとTS系ローファンタジーで新作を公開しています
『魔法少女アリウムフルール!!―魔法少女を守る魔法少女の話―』
と言うタイトルです。まだまだ序盤ですが、もしご興味があればよしなに




