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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
秋めく日々は初恋の季節
182/206

夏休みが明けまして

「久しぶりー」


「おひさー、ちょっと焼けた?」


「海行ったんだー」


「聞いてくれ」


「なんだよ、藪から棒に」


「彼女が出来た」


「マジでっ?!」


「裏切者かよ!!」


「てか可愛いの?写真とか無いの?」


一か月ほどの夏休みが終わって最初の登校日。久しぶりに顔を合わせたクラスメイト達と賑やかに会話を交わす光景は、きっといつの時代も変わっていない事だろう


「悠ちゃん、絵梨ちゃん、久しぶりです」


「久しぶり。ごめんね、遊ぼうって言ったのに全然遊べなくて」


「ホント、私からもゴメン。結局三人で遊んだのってプールと七夕祭りの時だけだったし」


「仕方ないですよ。それに、私も両親に連れられてあちこち旅行してましたから」


夏休み中にあった騒動によって、桃と思っていたように遊べなかったことを謝る悠と絵梨、そして桃もその例に漏れず、悠の席を中心にしてやいのやいのとお喋りを楽しんでいた


何だかんだ、三人で集まったのは半月前だ。これからは学校でほぼ毎日顔を合わせるが、それでも貴重な夏休みの期間を一緒に過ごせないのは少し残念でもあった


だからと言って、悠や絵梨にその時間的余裕があったかと問われる、少々怪しいところであるが


「おらー、お前ら着席しろー。今日はこの後始業式やって、LHRで終わりだから、お喋りはその後だ。出席取るからなー。相葉―」


「はーい」


そうこうしている内に担任である牧田教諭が教室へ現れ、生徒たちに着席を促すと、出席を取って行く


外はまだ、暑苦しい太陽の日差しと、鬱陶しい蝉の声がやかましく響いていた





「世の公立学校は、早急にクーラーを設置すべきだと思う」


「それに関しては、同感だな」


あの後、蒸し暑い体育館に全校生徒が集まり、更に室内温度が上昇した体育館で地獄のような始業式をした悠達は、ようやく終えた始業式から教室へと戻る廊下の最中、汗だくになりながら、公立学校にありがちな問題について忌々し気に漏らしていた


東北は宮城県にある笠山高校は、関東以南の学校より夏休みが短い。これは東北以北の地域は冬は雪深く、その結果冬休みの期間が長くなっている代わりだ


大体8月の25日前後辺りには、一足先に学校が始まる訳だ


端的に言うと、8月中に学校が始まるので、クソ程熱い。だからと言って9月頭が涼しいのかと言われると口を噤むのだが


汗で張り付いた制服に、不快感を感じながら、悠と郁斗はほかの生徒たちの動きに合わせて、教室への階段を昇って行く


「女子はスカートだから涼しそうだよな」


「そう思うでしょ?スカートの中に熱気が溜まって真面目に暑いよ。今すぐスカート中を扇ぎたい」


「……絶対やるなよ」


「流石に人前では」


人前じゃなければやるのかと、頭の中でツッコミを入れながらようやくたどり着いた教室へ戻るが、相変わらずモヤッとした湿気っぽい空気に、30℃近い気温が相まって、最悪の環境だった


そして、残念ながら本日は無風。まさに地獄である


「ウチの道場ですら、エアコンあるんですけど」


文句タラタラ、と言わんばかりに次から次へとこの暑さに対する不平不満が出る中、団扇や扇子で仰ぎながら、今度はLHRが始まるのだった


「あー、クソ暑くて文句もあるだろうが、もうちょっと我慢してくれ。とりあえず共通の課題提出しろー、忘れた奴は放課後取りに戻れ、一日の猶予とかは許さん」


暑い暑いと牧田教諭も文句を言いながら、学年共通で出されている課題の提出を促しながら、忘れて来た、と言う口実で数日の提出猶予を伸ばそうとしている、小賢しい生徒たちを絶望に叩き落す


世の中はそんなに甘くないのである


「間~」


「ヤダね」


「聞く前から断るとは薄情者め」


隣りの席の男子生徒から、救済を求められて即断する郁斗や、それにより崩れ落ちる男子を見る通り、一部で阿鼻叫喚の騒ぎとなっているのも、まぁ、学生ならではの風物詩だろう


「高嶺さんは課題終わってるの?」


「うん、郁斗と一緒にやったから」


「畜生、藪蛇だった」


悠も、近くの席の女子生徒(彼氏無し)を無意識に撃沈させながら、夏休み明け初日は騒がしく過ぎて行く


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