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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
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修行、邂逅、三度

男の主張に、二人は揃って眉を潜めた。何故、この男がそれを自分達に教えるのかが見えないからだ


相変わらず、この男が何をしたいのかが分からない。こちらを陥れたいのかと思えば、助ける様なそぶりも見せる

以前もこちらを害することが目的ではない、的な事を言っていたが、その割には出会えば剣を抜き、戦う姿勢を見せたりする


一体、何がしたいのか。ましてや、香達から忠告されたように、この男が審判に関わっている可能性もある。だが、今回の件はその審判に敵対するような素振りも見せる


読めない、この男が何をしたいのかが


「……あっちには香さん達が付いてるはずだ」


「そうだな。俺も彼女たちほどの実力者に出会った試しは無い、俺が出会えば秒殺される事だろう。だが、所詮は個人の戦力、如何に個人の戦闘能力が高くても、守り切れない時は守れない」


まるで噛み締めるように、男は言う。例え、個の能力が高くても取りこぼしと言うのは必ず出る

強い力は万能ではないのだ。それは、香達が修行の合間に悠達に口を酸っぱくしてでも言い聞かせていることの一つでもあった


自分達のような如何に強力な戦闘能力を持っていても、全ては救えないと、救えなかったと

全てを万事綺麗に解決することが出来るのは、夢物語の中だけなのだ


「俺には俺の目的がある。そのためにお前たちを利用している。それはお前たちも薄々勘付いている筈だ」


「……乗れって言うのか、お前のその目的とやらに」


「協力しろと言ってる訳じゃない。ただ、お前たちの仲間に此処で離脱されるのは俺の目的にもそぐわないし、お前たちにも不利益を被る」


つまり、一時的な休戦協定。こちらが手助けする代わりに、こちらも手を貸せ、という事なのだろう


三人が、恐らく危険が差し迫っているのは絵梨。彼女が害されるのは確かに二人にとっていい事態ではない。だが、それが本当の事かは分からない

郁斗が判断に悩み、喉元のスピーカーに手を伸ばした時、悠が口を開いた


「私はこの状態だけど、それを回復する手段は?」


「魔力の欠乏だったな。それならばこれを飲め、魔力を回復させるポーションだ。前回とは行かずとも、動けるようにはなるはずだ」


「乗ってあげる。毒だったら承知しないけど」


「ふっ、そんな姑息な真似をしなくても、今のお前程度に遅れは取らん」


「おい悠!?」


憎まれ口を叩きながら、投げ渡されたポーションの蓋を開けてグイッとあおり飲む。その行為に郁斗は驚くが、本人は素知らぬ顔で飲み干し、空いたボトルを男に投げ返した


「ポーションって言うからには試験官とか、それっぽいの無かったの?」


「そんな割れやすいものに入れて持ち運ぶか」


渡されたポーションの入ったボトルがプラスチックっぽい素材で出来ていたことに、イメージが壊れると文句を言いながら、悠は先程の疲労感が無くなった身体の動きを確かめる


問題は無い。確かに男が渡して来たのは、魔力を回復させる効果を持つらしい


「おい、どうなるか分からない物を口にするなよ?!大体こいつの話を信用するのか?」


「コイツに騙す理由が無いからね。こっちを害するなら、とっくの昔に私達の首は飛んでるよ」


「そりゃそうだが……」


心配する郁斗はあー、もう!!と頭をガシガシと掻くが、こうなった悠は頑固だ。テコでも動かないのは何度となく郁斗は経験している


「乗ってやるよ。どうせ、俺らの実力じゃアンタは倒せないんだろ」


「相変わらず頭が固いな。あまり考えずに直感で動くのも大事だと覚えておけ」


「ご忠告どうも」


小馬鹿にしたような物言いにイラッとする郁斗だが、ここで言い争っても良いことはない。この男の言うことが本当なら、絵梨に危険が迫っているのだから


「で、移動方法は?」


「俺がお前たちを抱えて運ぶ。後はお前たちに任せた」


「そういうとこは原始的なのね……」


感想は人間ジェットコースターだった


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