修行、邂逅、三度
だからと言って情報が得られなかった訳ではない
こうして直接目にし、会話が出来た時点で、それは貴重な情報源だ。それを精査して、必要な情報のみを抽出する作業を、情報を整理すると言う
「じゃあ、郁斗君、パッと君の意見と得た情報をお願い」
「了解です。見かけに関しては柏木からの情報通りの容姿と体躯でした。ですが、俺らを三人をガキ、と呼んでいたので、やはり見た目で年かさを測ることは難しそうです」
「じゃろうな。人外とはそう言うものじゃ、種族は絞れそうか?」
「すいません、それ以上の外見的特徴は特に、ただ、仮にあの背格好で成体なら背格好の大きくならない種族じゃないかと思います。喋り方に関しては、少し片言と言うか、発音のイントネーションがおかしかったくらいですね」
相手の見た目と、発言内容は何よりも貴重な情報源だ。うっかり口を滑らせてくれるのが最高だが、相手は慎重に行動するタイプ
早々に口を滑らせることは無いだろうが、それでも情報は情報だ
郁斗が口にして行く情報と意見に香と照は、それぞれの頭の中で相手の種族でも特定出来ればと頭を捻るが、生憎情報が少なすぎて特定は難しそうだった
「本人から審判の関係者かどうかは、言質が取れませんでしたけど、二人のところに審判の構成員が出たのなら、ほぼ黒だと思います。あと、以前見た死霊術で屍の獣を操っている節があったので、彼女が件の死霊術師だと推察します」
そんなところですかね、と郁斗が報告を閉め、これ以上意見は無いと口を閉ざす
実際、交戦時間は10分もあれば良い方だ。情報としては得られるのはこの辺りが限界だろう
「うーん、現状分かったのは相手の幹部級一人の姿が分かったことと、今の根城があの辺りにありそう、と言うくらいね。分かったわ、ありがとう」
得られた情報は決して多くないが、何もないよりは断然良い。問題はあの辺りで何をしていたのかだが、その辺はこれから調査するしかない
「こちらが渡した情報は、三人の戦闘練度と言うところかの」
「相手が元から様子見だった可能性もあるわ。そもそも、私達を足止めして、三人に直接行った辺り、狙いは……」
同時にこちらが渡した情報もある。三人の戦闘に対する練度が最も大きな情報だろう
もし、脅威になりそうなら目が出る前に潰しておく方が良いに決まっている
ついでに、もし別の目的があるのだとしたら
「……また、私???」
絵梨はガックリと肩を落として、結局自分は狙われ続けるのかと溜め息をつくのだった
その後はやはり特に大きく気付いた点が挙げられることは無く、時間も遅くなり始めたので解散
しばらくはまた向こうのアクションを待つという方針ににも纏まり、その間は悠達三人の修行を継続させて、少しでも練度を上げて行くことになった
「ただいまー」
ガラガラと玄関の引き戸を開け、帰宅したことを家族に告げた悠はペタペタと床を素足で歩いて、自室へと向かう
「お帰り、少し帰って来る時間が遅いんじゃないか?そろそろ晩飯だぞ」
「ただいま新にい。絵梨の家で盛り上がちゃってさ」
その途中で、やっと家に帰って来るようになった新一が顔を出し、ついでに帰宅時間に関して小言を言う
時間は19時前。まぁ、高校生としてはありがちな帰宅時間だ。運動部に入っていれば、これより遅いなんてザラにある話だろう
「それは構わないけどな。一応女の子なんだから、夜道には気を付けろよ」
「分かってるよ。郁斗も一緒だったしへーきへーき」
続く小言を鬱陶しそうに適当に聞き流すと、悠は自室へと入って鍵を掛けてしまう
新一が帰って来たのは良いことなのだが、如何せん小言が多い。寡黙な豪と、女子指導が一通り終わった桜は、割と放任なところもあるため、代わりに行っているのだろうが、思春期真っ只中の悠にとっては、心配からの発言でもウザくて仕方なかった
「あー、つっかれたー」
ぼすんッとベットへと身を投げ打ち、ゴロゴロとだらけ始めた悠は、桜に呼ばれるまでうつらうつらと船を漕ぐのだった




