表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
166/206

修行、邂逅、三度

それはさておき、三人は宣言通りここを起点に東西南北の順で少しずつ探索範囲を広げて行く


幸い、ここは区画整備された閑静な住宅街。仙台駅前のような路地裏や、どこがどこにつながっているのかが分からないような道はほぼ無い


まずは東側の隣接した一角を隈なく歩いて行くことになる


「しっかし、私を狙ったって後にちょっと音沙汰無いと思ったらこれだもんね。今度は何を狙ってるんだか」


「さぁな、俺らにはまだまだ考えが及ばない事やってる連中だし、その辺りはあんま考えてもしょうがないとは思うけどな」


ただひたすら、黙って歩くのも集中力が切れやすくなるだけだ。うるさくならない程度の声で適当な雑談をしながら、辺りの人や家に目配せをしながら三人は歩く


時刻は既に9時半を過ぎており、夏特有のジリジリ蒸し蒸しとした暑さがアスファルトから照り上げて来る時間帯になって来る


熱中症に注意しながらやらねぇとな、と郁斗は頭の片隅に浮かべながら、早くも滴って来た汗を拭うのだった












そこから二時間半。5人全員がめぼしい情報も掴めぬまま、今日の午前中の捜索は一旦中断し、昼食を取るために集合していた


「分かってはいたけど、今回は特に慎重派な相手ね。根競べになりそうよ」


やって来たのは幹線道路沿いにあったファミリーレストランだ。冷房の効いた室内に三人が火照った身体を生き返らせる中、おしぼりで手を拭いていた香がぼやいた


「既に移動した、とは」


「考えにくいの。野生動物が近づけば勘付く程の気配、痕跡が残らぬ訳がない」


「潜伏してる、と考えるのが妥当ね。恐らく、私達が捜索してると言うこと自体には勘づいてるでしょう」


ともするならば、こちらの戦力にビビッて潜伏先でひたすら身を潜めて増援や捜索の打ち切りを狙っているのか、はたまたこちらを誘い込む罠を張っているのか


郁斗が考えても、確かに根競べになりそうな展開が読める

その様子に香は素直に感心した


「やっぱり郁斗君を参謀役にして正解ね。ただの高校生がそこまで視野が広くて頭が回るなんて、そうそういるものじゃないわ」


「そうですかね」


「えぇ、その才能は数多の世界を見て来た私が保証するわ」


香にベタ褒めされ、恥ずかし気に頬を掻く郁斗に、悠は面白くなさそうに足を踏んでやる

悶絶する郁斗に爆笑する絵梨を見ながら、香は滅多に来ないファミレスのメニューに目を通した







昼食も終え、十分な休息を取った一同は、午後からの捜索にも力を入れる為気合いを十分に満たす

ついでにあまりの暑さからの熱中症対策に、香から簡易の冷却術式が三人に配られ、午前中の内に配ってくれとブーイングが出ていたりしていた


「じゃあ、午後も同じように捜索をお願いします。15時に各自休憩と報告、17時になったら今日は撤収とします」


そうして、5人はまたそれぞれの役割を担うために散る

そうして午後も16時まで、特に収穫無く過ぎて行った


「全く音沙汰無しね。やる気あるのかしら」


「やる気あるから隠れてるんだと思うよ」


「悠の言う通りだな」


情報のじの字も無い。ひたすら炎天下を歩き回った三人はかなり疲労がたまっている。幸い、香から提供された冷却術式のお陰で熱中症は避けられたが、もしこれが無かったらほぼ間違いなく熱中症になっていただろうなと断言できるレベルで、今日の日差しと気温は暴力的だった


一日歩き詰めで疲れがピークに来ていた絵梨が、愚痴るも、そもそもやる気の問題でも何でもないためその文句はまるで的を射ていない


ただ、これが何日も続くとなるとキツイな、とは全員が思っていたことだった


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ