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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
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修行、邂逅、三度

香の転移の術で移動した先は人目に付かない林の中だった。少し目を凝らせば、林を抜けた先に幹線道路が通っていて、その更に向こう側に住宅地が広がっているのが見える


あそこが、今回話にあった場所だろう


「此処からは別行動よ。私は空から、照は三人の足が届かなそうな遠方の地域をお願い。三人はこのまま歩いて住宅街の捜索よ」


指示を受けると5人はそれぞれ割り振られた役割を全うするため散開する


香は翼を広げて一気に空へ、照は一っ跳びで一気に離れた土地まで跳躍していく

三人も負けじと足場の悪い林を駆け抜け、幹線道路の歩道まで出て来た


「此処からは人目がある。あまり挙動不審にならない様に、出来ればいつも通りの雰囲気で行こう」


「おっけー、任せて」


それなりに交通量のあるところまで出てきたところで、三人は駆け抜けて来たスピードを落とし、普段通りを装って、周囲の探索に出る


香や照のような高速移動や飛行術、姿を隠す術を持っていない三人は一般人を装っての捜索になる

如何にも何か探していますという雰囲気では、出て来るものも出て来なくなってしまう


「とりあえず、その女の子を見たって場所の近くまで行こう。絵梨、案内できるか?」


「近くまでなら行けるよ」


ともかく、まずは目撃情報があった場所に向かうのが筋だろう。このチームの頭脳を担当する郁斗が方針を打ち出し、三人はその場所へと程々の歩行ペースで向かうことにする


周囲は何の変哲もない住宅街だ。どちらかと言えば庭付きや二階建ての少し大きめの家が多く、この辺りでも少しお金に余裕のある人たちの家が並ぶ一画なのかもしれない


「……」


「絵梨、どうしたの?」


「えっ?あぁ、ちょっとね。実家、この辺だからあんま良い思い出ないんだよね」


その特に代わり映えのしない風景を絵梨が何時になく眉根を寄せて見ているのに悠が気付き、絵梨の表情を見上げたまま心配の声をかける


すると、どうやら絵梨の実家とやらはこの辺りらしい。ロクでもない親と過ごした地域だ、あまり目にしたくない光景が故に自然と険しい顔になっていたのかもしれない


「え、えーっとごめん」


「別に謝らなくてもいいって。どうせ、今後関わる事なんてほぼ無いしね。今は、その女の子を探すことに集中しないと」


そう言って、絵梨は辺りを不自然にならない程度にキョロキョロと辺りを見回しながら、三人を先導していく。その目は既に薄紫に輝いており、情報収集のためにサトリ妖怪の力を発動している証だ


それを見て、悠も要らぬお節介より与えられた役割に集中する。悠はこのチームの切り込み隊長兼、まだ戦力としては練度の低い二人のボディーガード役でもある


悠が気を抜いたことで、二人が酷い目に合う可能性だって否定は出来ない。そう意気込んで、肩にかけてあるバットケースに入れた木刀を背負い直した





「この辺かな、その子を見たって辺りは」


幹線道路から歩き始めて数10分。小鳥たちがその少女を見たという場所にやって来たが、やはり特に代わり映えのしない住宅地だ


「特に何があるって訳でもないな」


「うん、ただの田舎の歩道だね。時間も微妙だから人通りも車通りもまばらだし」


「とりあえずここを中心に探索範囲を広げて行こう。30分おきに休憩を挟みながらひたすら歩くぞ」


「了解っと!!」


目撃があった場所自体には特に何もない以上。捜索範囲をそこから広げて行くしかない

地味だが、元より情報の無い捜索と言うのはこう言うものだ


ひたすら地道に努力していくしかない


【郁斗です。目撃のあった場所に到着しました、ここから東西南北の順番で徐々に捜索範囲を広げて行きます】


【了解。順調だね、郁斗君。そちらの指揮は任せたよ】


【焦るなよ小僧。焦ると相手に気取られるからの】


【了解です。小休止を挟みながら続けます。また何かあったら】


郁斗が香から支給された首に巻くチョーカー型のマイクと、無線イヤホンに似た形状のスピーカーでセットになっている通信用魔道具で香達と連絡を取る


あまり魔法っぽくない形状だが、香曰く、この世界にもありそうで普段からつけてても問題のないアイテムに偽装しながら魔道具としての利便性を追求した結果、この形状に落ち着いたらしい


これで、科学の要素は全く使っていないと言うのだから魔法と言うのは恐ろしい

まぁ、科学技術もだいぶ似たような領域まで来ているのだが


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