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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
変化の先の日常
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一か月の成果

「中々服装は様になってるな。てっきり服装も適当に男物で誤魔化してるもんだとばっかり思ってたんだが」


「……胸と尻がつっかえて入らないんだ」


「スマンかった」


肩を落とす悠の恰好は女の子らしいものでトップスは白のゆったりとした丸首シャツに薄いカーキ色のワイドパンツと呼ばれる股下から裾までが広く、寸胴なズボン。それにベージュのロングカーディガンを合わせている


髪型も合わせて桜に結われており、耳やうなじを出して右側で纏められている。少しアイロンで巻いたのか結われた先はくるくると巻いていた


春コーデ、と呼ばれるやつなのだろう。今いる二人にはよく分からなかったがこの全体的にゆったりスッキリなコーディネートした桜がそんなことを言っていたようなことを悠はうっすらと思い出した


「俺の服装は良いんだよ。つーか、そうだお前さっき俺のブラみたっつったな」


「余計なことを思い出させてしまった」


服の事で思い出したがさっき郁斗はそんなことをぽろっと言っていた

桜はそういうセクハラ行為を許すなと言っていたし、何か罰を与えてやろうと悠は立ち上がる


「とりあえずヘッドロックで良いだろ」


バッと郁斗に襲い掛かり素早く頭を抑え込み、腕と胸で頭を締め上げる

昔からよくじゃれついていた時にやっていて郁斗は大抵逃れられたことはない、今回もそうなのだが


「いだだだだだ?!痛いけどおまっそれは――」


上手くキマッているので郁斗は当然痛がる、だがそれ以上の大問題があった

ヘッドロックはその技の掛け方の都合上、対象の頭を腕と胸で挟み込んで締め上げることになる


まぁ、それは良い。問題は今の悠の性別である

悠は今女子なのだ、しかもDカップの巨乳美少女。それがそんなことをしたらどうなるのか


「胸、胸当たってるから!!?」


「んん??……!!!」


「いだだだだだだだだだだ?!ギブっ、ギブだ!!?」


技を掛けられた方は痛い反面、その豊満なおっぱいを顔や頭にたっぷり押し付けられることになる

そのことにようやく気が付いた悠が顔を真っ赤にして更に締め上げる、逆効果だというのに


「なーにやってるのかしら?」


結果として、飲み物を持って来た桜に発見され二人仲良く小一時間お説教されることになった

















「あの時はどうやってもこいつは女らしい仕草は無理だろって思ったぞ」


「うるさいよ、まだ外面だけなのは自覚してるけど結構大変だったんだから」


そしてそれから一か月後の現在、どうにかこうにかして及第点をもらった悠は笠山高校に復帰、現在は人気のいない体育館の(ヒサシ)の下で昼食を摂っていた


その風景は長身で元サッカー部のエースストライカーの郁斗と美少女転校生の悠の美男美女カップルなのだが、実際その中身はただの腐れ縁の幼馴染である


「弁当も随分可愛らしくなりまして」


悠の膝の上に広げられてるのは両掌に収まる位の如何にも女子っぽい小さくて可愛らしい弁当だ

中身もカラフルでどちらかと言うと肉よりも野菜が豊富な女子色の強いラインナップ


「うっさい、身体が縮んだから胃も小さくなってるし女子が大盛りの二段弁当なんて持って来た日にはドン引きだろう」


「柔道部とかなら納得するけど」


「帰宅部だバカ」


軽く脇腹に突きを入れてから弁当をパクパクと食べ進める

横で郁斗がむせているが知らん顔だ、半分は自業自得だろう


自分で作った卵焼きを食べてもうちょっと甘い方が好みだなぁと思いながら食べていると復活した郁斗に最後の一つの卵焼きをさらわれたのでお返しにから揚げを奪う


「あ、てめ最後の一つを!」


「お互いさま。郁斗も私の手作り卵焼き取ったでしょ?」


「え、これお前が作ったのか!?」


「文句ある?」


もっきゅもっきゅと奪ったから揚げを頬張りながら答えると郁斗が驚愕の声をあげる


女の子は料理の一つくらいはちゃんと出来ないとね?という桜の女子力特訓で無理矢理やらされているので悠としては何とも思わないどころか勘弁してほしいのだが、こうして女子として擬態して学校に来れているのは桜のおかげなのだから文句を言えるはずもない


「めっちゃ美味い……」


横でぼそぼそ言っている郁斗は放っておいて悠はこれからの事を考える

暫くは郁斗のサポートもあるからどうにかなるだろうがどうにも成らないことも必ず出てくるはず


そこを乗り越えられるかは不安だったが人間、平穏が一番である。平穏に生きたいのであれば波風を立てないのが一番


「頑張るしかないかぁ」


最終的には自分の頑張りが結果につながるのはどんな物事にも言える事。サポートは所詮サポートでしかないのだ


心の中で改めて決心しながら悠は梅雨真っ只中の中で珍しく青々と晴れた今日の空を見上げる

ちょっと湿った風が初夏を告げていた


ただし、とても重要なことを忘れたままなのを悠は気が付いていないのだが

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