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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
158/206

修行、邂逅、三度


一閃、木刀の剣先が燐光を散らしながら地面すれすれを逆袈裟に薙ぐ

その太刀筋の通りに足場の草原の草を切り裂きながら振るわれたそれは、迫り来る炎弾を切り裂いた


「伸びろ【真竹】!!しなれ!!【柳】!!」


そのまま【名付きの型】を二連続で使う。【真竹】は刀身を実際の大きさよりもずっと大きくする技。本来なら距離がある場所から急所をいきなり突き刺す技。【柳】は刀身をしならせる技だ。あり得ない太刀筋から敵の頸動脈を狙うエグイ技で、鞭のように扱うことが出来る


その二つを同時に使い、10mにもなった刀身をしならせて襲い来る炎弾を次々と切り裂いていく


「はぁッ!!」


全て切り裂いた後はその奥にいる本命を叩くべく、再度木刀を振るう

悠の意思を汲んだかのように寸分違わずに目標へと斬りかかった


「甘いっ!!」


その目標、照が炎を纏った腕を振るって、悠の伸ばした木刀の剣先を弾き飛ばす

届かなかった刀身はスルスルと元の長さまで戻ると、そこには当然、木刀を構える悠の姿があった


「先日まで儂の炎弾を躱すのが精いっぱいだった小娘があっという間に炎を切り裂くとはの。流石に舌を巻くぞ」


「そのままその舌ちょん切ってやるわ」


「カカカっ、戦いとなると途端に口が悪くなるな。可愛いものだがの」


「このぉっ!!!」


「ハハハハハ!!まだまだお主には負けぬどころか傷の一つも負わんわ!!とにかく全力で来い小娘!!」


挑発しまくる照に、それに乗る悠。また剣戟と炎弾が飛び交う、その50m以上離れたところでは、青空教室よろしく、簡易なテーブルとイスやクッションに座って、香の手によって郁斗と絵梨の二人に魔法に類するものに関する実践も兼ねた講義が行われていた


「科学的なエネルギー以外の生命が元来持っているエネルギーを扱う、これがあなた達の認識する魔法だというのは、先日も話した通り。その広義の意味での魔法は、使うエネルギーの種類によって、名称も運用方法も変わって来るわ」


「魔力なら魔法または魔術。妖力なら妖術。呪力なら呪術。霊力なら霊術。法力なら法術……」


「そう、他にも数多の世界にはさらに細かい分類のエネルギーの種類とそれを扱う術があるわ」


「俺たちはその中で妖力、と」


学校の授業よろしく、ノートを取りながら、二人は香の授業を真面目に受けている

香の授業は非常に分かり易い、と言うのが二人の共通の認識だ。要点をちゃんと伝え、それに付随した雑学的知識も二人に伝えて行く


ちょっとしたジョークや、豆知識的な話を交えながら続く授業は、学校の授業とはまるで違う、飽きの来ないものだった


「まだっ、やる!!」


「無茶を言うな馬鹿者。魔力切れでフラフラではないか。意識して使い始めて、馴染む様になったとはいえ、まだまだ使い方が荒い。魔力が微量回復したら次はコントロールの修行じゃ」


「ぐうううううう」


そうして香の授業を受けているとそのうち、照に手も足も出なかった悠が魔力切れで足腰が立たなくなり、担がれて戻って来る


こうなれば、座学組も休憩だ


「また魔力切れになるまでやったの?あんまり無茶はおススメしないよ」


「そういう事じゃ、しばらくは小僧のところで寝ておけ」


「きゃあっ?!」


「のわぁっ!?」


ポイっと悠を放り投げて郁斗に渡すと、照はドカリと草っぱらの上に直接腰を下ろして、こきこきと肩を鳴らす


その余裕の動作に悠は犬のように唸りながら郁斗の膝の中に収まっているが、そのうちうつらうつらし始めたと思ったらあっという間に眠りこけてしまう

魔力切れが原因の猛烈な眠気には抗えなかったようだ


「相変わらずあっという間に寝ちゃったわね。魔力切れってそんなに眠くなるものなの?」


「基本的には体力と同じよ。無くなった魔力や妖力の回復に一番効果があるのは睡眠。次に食事や単純な休息ね」


「成る程」


すよすよと眠る悠の位置を調整して、抱きやすい恰好に抱え直した郁斗はここ最近のこのルーチンに納得した


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