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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
155/206

バカ兄連れ戻し作戦

少し離れた廊下の先、前に見た頃よりも伸びた髪と適当に首元をくつろげたシャツと、よれた白衣を身に纏っているのは、誰がどう見ても悠の兄、新一である


それに気付いた悠が目を丸くすると、新一の方はヤベっと一声上げてその場を逆方向に駆け出した。有り体に言って、逃げた


「あ!!待てコラバカ兄貴!!!」


「妹ちゃーん、教授から許可出たってうおぁっ?!」


逃げた新一を追って、悠も全力疾走を開始する。丁度戻って来た堀川院生が驚くが、今はそれどころではない


人の顔を見て露骨に逃げ出したバカ兄をとっ捕まえるのが悠の今の使命である


「逃げるなー!!!!」


「なんだって大学まで来てんだよ?!?!」


「お盆になっても帰って来ないバカは何処のどいつだ!!!!」


逃げる新一に追う悠。普通に考えれば、背丈もあり、男性で棟内の地理にも明るい新一の方が圧倒的に有利であるが、そこは日ごろからの運動量の差がひっくり返す


ついでに言えば先日から、香と照から直々に訓練を受け始めたところであり、その効果も顔を覗かせているが、その話はまた今度


「待てって――、言ってんの!!!」


「どぶぇっ?!」


今は逃げる新一に飛び蹴りをかまして、見事着地した悠と無様に地面を転がった新一の心配をしてやるべきだろう


主に怪我的な意味で


「いっつつ……。お前、兄に飛び蹴りかますなよな」


「逃げる方が悪い」


捕まった新一はすぐに抗議の声を上げるが、悠がそれに聞き耳を持ってやる理由などない。元々、新一が帰って来ない上に逃げ出したのが悪いので合って、悠からすれば逃げ出した阿呆をとっ捕まえただけなのだから


「い、妹ちゃん。ぜぇっ、はぁっ、と、棟内は、走っちゃダメだ、って、はぁっ、はぁーっ」


「ごめんなさい。馬鹿兄が人の顔を見た瞬間逃げ出したもので」


「高嶺っ、おまえ、なぁ……」


二人が悶着してると、追い掛けて来たらしい堀川院生がぜぇぜぇと息を切らせながら合流する


突然猛ダッシュした悠を注意するも、その理由を聞いて、新一に呆れの目を向けるしかない

実の妹の顔を見て、逃げる兄が何処にいるのか


「とりあえず、教授のところに行くよ。高嶺も、それで良いだろう?」


「……分かったよ」


ともかく、状況をまとめるには目上の人間がいた方が良さそうだと判断した堀川院生の提案に、新一は渋々と言った表情で了承する


それを見て、悠と堀川院生の二人は肩を竦めるしかなかった







「成る程ね。心配したご両親の代わりに、妹さんが迎えに来た訳だ」


場所を移し、教授の研究室で三人は教授の佐伯という教授に事の詳細を説明していた


「ハイ、兄はもう3週間も家に戻ってない上に、父と母の話ははぐらかして誤魔化した上に、私からの連絡に至っては完全に無視だったので」


「高嶺君、それはいけないとボクも思うなぁ。何回も帰る様にボクからも、ボク以外の人からも注意を受けていたよね?」


「……すみません」


悠は肩を怒らせながら、佐伯教授はふむふむと頷きながら、堀川院生は静観、そして事の原因である新一は、直接の上の立場である教授から直々にお叱りを受けて、所在なさそうにしていた


「別に家族仲が悪いなんて話は今まで聞いてなかったよ?ホント、ここ一か月くらいだよねぇ、自宅に帰らなくなったの。何かあったのかい?」


「……自分の研究に、集中したくて」


「嘘は、イケナイなぁ。その割には、君の研究はらしくも無いくらい進みが悪いじゃないか」


「……」


教授に問いただされても、頑なに話そうとしない新一に、教授も肩を竦めるしかない


あまり家庭のことに他人が首を突っ込むのは褒められた話ではないが、もう3週間と言えばひと月近く自宅に帰って無いことになる


それは流石に、ハイそうですかと受け流せるものではない。分別ある大人として、若者に注意しなければならないな、と言うのが教授の心境だった


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