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俺を返せ!!  作者: 伊崎詩音
気付き始めた心と身体
152/206

バカ兄連れ戻し作戦


郁斗の呪いが発覚し、その応急処置が終わってから一週間。8月も半ばとなり、東北の高校だと夏休みもあと10日ほどで終わるという頃合い

世間はお盆を迎え、帰省ラッシュなどの情報がニュースを飛び交う時期だ


夏の暑さもいよいよもって真っ盛りとなり、憎たらしいほどの快晴と雄々しく伸びる入道雲、カンカン照りの日差しが容赦なく降り注ぎ、気温は35℃を超えている


「あっつー」


そんな中、悠は電車とバスを乗り継いで一人で遠出をしていた。珍しい一人での行動だが、こればかりは一人で来ざるを得ない理由があった


所謂家族絡みの用事だ。本来なら、親の豪や桜が引き摺ってでも連れ出して行くのだが、高嶺家当主とその妻ともなると方々に散らばった親戚親類の相手で大忙しとなる


そのため、悠に白羽の矢が立った、という訳だ


尚、親族には今回のお盆を期に、(ユウ)(ハルカ)については説明がなされている。元より門外不出の武術を受け継ぐ家系とあって、親族一同揃って秘密に関する口が堅い


また、20代以上の分別の有る者か、8歳以下の子供くらいしか悠の歳に近い者がいなかったのも幸いしているのだろう

下手に口にしてもロクなことが無いと分かっている大人たちと、首を傾げる子供たちのお陰で、悠の平穏は守られそうであった


「ここが大学の校門かぁ。立派だなぁ」


それはそれとして、悠が一人でここ、仙台学院大学のキャンパスにやって来た理由はただ一つ


「全く、お盆ににすら帰って来ないつもりとか馬鹿兄め」


気が付いたらすっかり大学に引きこもっていた、悠の兄、新一を大学から引っ張り出して来るためだった


(ユウ)(ハルカ)になった当初、特に新一との兄妹仲は以前と変わらず、不仲でもなく、かといってブラコンシスコンと呼ばれるようなことも無く、ごく一般的な兄妹の間柄だった


歳が7つ離れていて、悠が思春期真っ只中の高校生と言うのもあって一緒に遊ぶようなことは無かったが、顔を見せれば会話はするし、新一も兄として悠のサポートに回っていた筈だったのだが


「いつの間にか丸っきり家に帰って来なくなるし、露骨に避けられてるの物凄く腹立つんだよね」


7月ころから、大学から帰って来ることがほぼなくなり、最近は3週間ほど帰って来てすらいない

心配した桜が連絡をしたり、豪が少しは帰って来るように言うが、新一からはイマイチ反応が薄く、悠からの連絡に関しては無視を決め込む始末


流石の悠も、この行為には苛立ちが募り、バカ兄のことなど知らんとこちらも無視を決め込んでいたのだが、盆まで返って来ないつもりとなると話が違う


お盆は年末年始と合わせて、親戚一同が介する少ない機会。顔見せや近況報告などの意味合いもあるし、先祖の墓参りと言う大事な風習もある

子供ならともかく、成人した者なら礼節などの意味合いも込めて、最低限のことは熟す方が、円滑な人間関係を築ける、というものだ


そんな24歳、そろそろ良い大人の兄、新一が大学院で引き籠ってお盆にすら帰って来ないと来れば、引き摺ってでも連れ出すぞと言うのが家主たる豪の決定だった


「すみません、分子解析研究棟って何処にあるか教えてもらっても良いですか?」


「えっ?生物棟と化学棟の間だけど……、関係者じゃないと入れないと思うよ?」


「兄がそちらに在籍してるので、案内だけしてもらえれば」


「あぁ、成る程。俺も近くの実験棟に用があるから、案内するよ」


「ありがとうございます」


その先兵として送られた悠は、一先ずこのキャンパスの地理に詳しいであろう、手ごろな男子大学生に声をかけ、案内をしてもらうことに成功する


ポイントは爽やかでおしゃれにも気を使ってる大学生に声をかけることである。そういう大学生は勉学はともかく、広い交友関係や人当たりの良い、あえて言うなら女子慣れしている人が多い

服装に無頓着、という事は外見からの判断でズバリ、モテない奴。つまり女子慣れしていない、そういう人に悠が話しかけても、テンパられてちょっとめんどくさいのだ


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