のろい
楽しみに楽しんだ縁日屋台も、小さい規模と言うのもあって一時間も来れば流石に飽きが来る
かと言ってメインである大きな七夕飾りも言ってしまえば見るだけの物。こちらも華やかさで目を楽しませるとは言え、まだ高校生という若い年代を引き戻すにはあまり効果が無いと言える
「流石に飽きたわね」
「まぁ、お祭り自体は大きいですけど、飾ってあるのを見るだけですしね」
一時間前とは打って変わって退屈そうな表情に変わっている絵梨と、どうしましょうかと首を傾げる桃
「お腹もいっぱいだし、景品系の屋台は香さん達が出禁になったし」
「あれは二人が悪い」
変わらず子亀の入ったプラケースを持つ悠と、その隣で屋台でもらった幾つかの景品などを持つ郁斗は、後ろでぶつくさ文句を並べている大人組をちらりと見る
「別に良いではないか。ルールに則ってるし金は払っていると言うのに何の文句があると言うのだ」
「うーん、はしゃぎ過ぎた。持っててもしょうがないものは返してこようかな」
とは言うものの、文句を並べているのは照だけで、香の方はやり過ぎを反省し、一部の商品の返品も考えているようだ
特にゲーム機やソフト、エアガン等のおもちゃは彼女達には全く以て不要な物で、部屋の片隅で埃の被っているのが想像出来てしまう
「二人はどうします?」
「楽しむものは楽しんだしの」
「花火とかは無いんだよね?そろそろ夕方だし、暗くなる前に帰ろうか」
一応、保護者枠の二人も帰る方針で問題ないようで、道すがら獲得したいらない景品を屋台に返しながら一行は仙台から笠山に帰ることを決定する
屋台に景品が返された店主がホッとした表情をしていたのが非常に印象に残る帰り道ではあったのは、何とも言い難い
帰りは多少の混雑は見られたものの、込み合う商店街通りを避けて通ったこともあり、電車も満員ではあるが行きのすし詰め状態でないだけ断然気楽に笠山駅まで戻って来た一同は、ここで解散の流れとなる
「父が帰り道ついでに迎えに来てくれるそうなので、私はここで失礼しますね」
「うん、分かった。またね桃ちゃん」
「次は何するか考えといてねー」
「じゃあな」
仕事帰りの桃の父親がついでにと桃を迎えに来ている様で、歩いて帰る他の面々とはここで別れることになるからだ
その残りの面々は高嶺家に衣服や荷物を置いて行ってるため、一旦高嶺家に行ってから解散の流れにはなるが、郁斗の脚の件もあるため、まだしばらくはこの顔ぶれのままだろう
「桃よ、お前の父はもう到着しているのか?」
「いえ、少し待つようになりますね」
「では儂が着いて行こう。不埒な輩が出るとも限らんし、一応は保護者じゃ。最後まで面倒を見るのが筋じゃろう」
その桃が無事に父親の迎えが来るまでのボディーガードとして照が名乗りを上げ、一行は本格的に解散となった
「照ってば、桃ちゃんのことを結構気に入ったのね」
「そうなんですか?」
桃のボディーガードを率先して名乗り上げた照の一連の行動を見て、香は面白そうに表情を緩める
悠達としては単純に桃が無用な危険に晒されないようにするための措置だと思っていたため、香のその結論には少し驚きだった
「あんまり人間には興味がないからね、照は。どちらかと言うと人間の営みそのものを重要視していて、個人を贔屓するようなことはあまりしないの」
その辺は神様臭いのよねぇと漏らす香の言葉を聞いて、絵梨はやっぱり神様なんだと、自身の予想が正しそうなことに顔を青白くさせるが、他の面々はそんなことは露知らず
悠と郁斗の二人は香の個人をえこひいきしない、という事には何となく察しがついていたのか、あーと声を漏らしている




